長繊維を形状に沿って配向した機能部品の光造形

2016 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K06003
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 中本 剛 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (30198262)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: 光造形 / 炭素繊維 / 配向

研究実績の概要

平成28年度は研究実施計画にしたがって，形状に沿って配向した長繊維で強化した部品を光造形法によって製作する方法を開発することを目的とした．使用する長繊維として，炭素繊維を選定した．炭素繊維は，引張強度3GPa以上であり，かつ，曲げることが可能な材料である．θステージの上にX-Yステージを置き，θステージの回転中心に光源の紫外線レーザビーム（He-Cdレーザビーム）が照射されるように設置した．X-Yステージの下にθステージを設置しているので，X-Yステージを移動させても，レーザビームは常にθステージの回転中心に照射されている．この実験装置を製作した．製作した実験装置のX-Yステージ上に基板を置く．基板上には液体の紫外線硬化樹脂を塗布し，樹脂中に炭素繊維を置いて張力を作用させて真っ直ぐにする．X-Yステージの移動によってレーザビームを描画し，θステージの回転によって炭素繊維の配向方向を変更した．
この方法で造形するときには，あらかじめ樹脂のみの部分を硬化した後に炭素繊維を含む樹脂の部分を造形するほうが良いことがわかった．さらに，基板と炭素繊維を同一平面上に置くと，造形中に炭素繊維と基板との摩擦のために炭素繊維を設定した角度に配向することができなかった．このため，基板と炭素繊維の適切な位置を実験によって検証した．炭素繊維に作用させる張力についても大きすぎると炭素繊維によって造形物を壊してしまい，小さすぎると炭素繊維を配向することができなかった．このため，炭素繊維に作用させる張力の適切な値を実証した．
以上の実験結果をもとに屈曲部を数個，有する平面的な構造物中で炭素繊維を形状に沿って配向することができた．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度の研究実施計画では，造形装置を製作して，造形物の一端から他端まで炭素繊維を配向させるために適した条件を実証することを目的としていた．この段階までは研究を遂行することができた．

今後の研究の推進方策

平成29年度以降は，本研究の方法で，造形物中の炭素繊維の含有率をどの程度まで増加させることができるかを検討する．造形物中の炭素繊維の含有率が高いほど，造形物の強度を向上させることが期待できる．しかし，炭素繊維の含有率が増加すると，造形中に紫外線が樹脂内部まで達することができなくて樹脂を硬化させることができない恐れが生じる．含有率を増加させる方法として，炭素繊維の太い束を一度に含有させて造形する方法と細い炭素繊維を何回かに分けて造形する方法が考えられる．いずれの方法のほうが適しているのか検討したい．さらに，得られた造形物の強度も引張試験によって評価する予定である．

次年度使用額が生じた理由

平成28年度の当初の研究実施計画では造形実験装置の製作のためにX，Y，θの各ステージとステージコントローラ、コンピュータ等を購入する予定であった。実験装置製作のためにこれらを購入する前に、本申請者が現在、所有しているステージを用いて予備実験を行い、その結果から判断して、本実験用のステージ等を購入する予定であった。しかし，予備実験で使用したステージによって実験を十分に遂行することができたためにステージを新たに購入する必要がなくなってしまった。

次年度使用額の使用計画

平成29年度は前年度までとは異なる寸法の造形物を製作することが生じる。このため、計画当初のステージを購入する予定である。本造形方法では，θステージの回転中心とレーザビームの光軸を一致させる必要がある．しかし200μｍ程度のずれが生じてしまう．これを補正するためのステージの購入を計画している．