研究課題/領域番号 |
16K06005
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
坂本 智 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (90294339)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | スライシング / 溝加工 / 研磨 / 硬脆材料 / 材料特性 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンド電着ワイヤ工具を実機相当の線速で走行可能な実験機を用いてスライシング実験を行った結果,被削材の硬度・靭性値が高いほど,スライシングに要する加工時間は長くなる傾向にあることがわかった.また,多結晶シリコンと単結晶シリコンでは,スライシング終了までの加工時間に若干の差異はあるものの,顕著な違いは認められなかった.さらに,ワイヤ工具のダメージは,加工時間に依存する傾向にあることが明らかとなった.加えて,ダイヤモンド電着ワイヤ工具にスラリーを援用したスライシング実験では,スラリーを援用することでスライシング時間の短縮,スライシング面粗さの向上が期待できることを明らかとした.しかしながら,スラリーを用いることでワイヤ工具の実質的な切込み量が減少するため,ワイヤ工具に適する粒径の砥粒を選択する必要があることがわかった. カーフロスを低減させるため,線径50μmの小径ワイヤ工具を用いて溝加工実験を行った結果,線速の加速領域を設けることで工具寿命が延びることが明らかとなった.しかし,加速領域が全加工時間の中で占める割合が大きくなると加工効率が低下するため,適切な加速領域を設けることが必要である.また,加速領域を設定することで,加工初期段階におけるワイヤ工具のブレを抑えることが可能となり,溝幅は狭くなる傾向にあることがわかった.さらに,金属箔による溝加工実験も行い,厚さ10 μmの金属箔でも硬脆材料の加工が可能であることを明らかとした.溝深さは加工時間および加工圧に影響を受け,溝幅は使用砥粒径に依存する.しかし,金属箔の厚さに対して使用砥粒径が大きくなりすぎると加工不能となる.今回の実験では,金属箔に張力を与えていない状態で加工を行ったが,最適な張力を金属箔に与えることで,さらに高精度な加工が可能となり,カーフロスも減少することが考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,単結晶シリコン,多結晶シリコン,硼珪酸ガラス(TEMPAX),単結晶サファイアを購入し,スライス実験・溝加工実験を行った.ダイナミック硬度計に不具合が生じ,被削材のダイナミック硬度,弾性率等の測定に遅れを生じたものの,年度末までに復旧させることができ,本年度中に測定することができた.また,実機相当のワイヤ走行速度でスライシング実験が可能な装置による基本的なスライシング実験,スラリーを援用し,砥粒の実質切込み量を調整したスライシング実験,カーフロスを低減させるための基礎実験(溝加工実験)も行った.これらのことを総合的に判断すると,本研究課題がおおむね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
ダイナミック超微小硬度試験によって得られたシリコン(多結晶,単結晶),硼珪酸ガラス(TEMPAX),サファイア(単結晶)の材料特性(弾性的/塑性的挙動および脆性的挙動)とスライシング・溝加工特性,研磨特性との関連性について詳細に検討する.そのため,これらの材料のの研磨試験・ビッカース圧子によるき裂長さの測定等を行う.また,セラミック(アルミナ等)溶射被膜を対象にした加工実験も行い,セラミック単体と溶射被膜との比較も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
ワイヤ工具が当初予定よりも若干低価格で購入できたため,予算に余裕が生じた.翌年度,砥粒および加工液の新規購入に充てる予定である.
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