研究課題/領域番号 |
16K06007
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
岡田 将人 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (60369973)
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研究分担者 |
大津 雅亮 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (20304032)
三浦 拓也 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (60781466)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 切削加工 / ダイヤモンドコーテッド超硬工具 / 超硬合金 / 直彫り加工 / エンドミル加工 / ドリル加工 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,ダイヤモンドコーテッド超硬エンドミルを用いた超硬合金の直彫り加工において,一刃あたりの送り条件が切削機構に及ぼす影響を解明するとともに,それが仕上げ面性状に与える影響を明らかにした.加えて,前述の直彫り加工中における工具刃先温度を測定することで,工具が加工中に晒される熱環境について検討を加えた. 工作物の超硬合金成分である炭化タングステンについて,平均粒径5ミクロンを有する超硬合金を採用し,これに対し一刃あたりの送りを,粒径より極めて小さくした場合(0.5ミクロン),同程度とした場合(5ミクロン),倍程度(10ミクロン)とした場合の3種類の送り条件による影響を検討した.その結果,0.5ミクロンの一刃あたりの送りの場合に,最も工具寿命が短いとともに,仕上げ面性状に明確な凹凸形状が認められた.一方,5ミクロン,10ミクロンの場合,工具寿命は0.5ミクロンよりも飛躍的に伸長した. 切削加工中の工具温度について測定した.工具温度測定実験では,工具温度に支配的な切削速度(工具回転数)を変化させて,数種類の条件で実験を行った.一般的な鉄鋼材料の切削加工では,高硬度材料の切削加工を行うと,極めて高い切削温度となり,これが工具摩耗(工具寿命)に支配的な影響を及ぼす.これに対し,超硬合金の直彫り加工においては,工具逃げ面温度で最大でも500度程度であり,ダイヤモンドコーティングの摩耗に支配的な影響を及ぼす程度の温度は認められなかった.これは,超硬合金が高い脆性を示すために,工具刃先と工作物の接触により,工作物側で亀裂が工具の進行に先んじて進展することによると考えられる. これらと並行して,ダイヤモンドコーテッド超硬ドリルを用いた超硬合金の穴あけ加工について,基礎的な工具摩耗の進展形態について確認し,ドリルコーナ部においてエンドミル加工時と同様のコーティング剥離が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エンドミル加工においては,当初の予定では,超硬合金の直彫り加工における切削工具の刃先形状について,FEMモデルを用いて解析的に検討を加えることを予定していた.しかしながら,FEMモデルでは,まだ超硬合金の直彫り加工における刃先で生じる現象の高精度な再現は困難であった.しかしながら,これらを実験的に明らかにするために,複数の切削条件による切りくず排出形態を検討することで,当初の目的を概ね達成することができた.また,これらと併せて,切削途中における工具刃先の工具温度測定を予定していたが,これについては,予定通りの測定を実施でき,これまで得られていなかった新たな知見を得ることに成功した. ドリル加工については,当初の予定では,平成29年度より検討する内容であったが,上記のエンドミル加工の実験と並行して進めることができ,基礎的な切削特性を明らかにすることができた. これらのことから,進捗状況については「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降の研究の推進方策について,当初の研究計画からの変更点と併せて以下に示す. エンドミル加工においては,当初はFEM解析により得られた知見をもとに,良好な切削特性が得られる刃先形状を検討し,それらを実工具として再現し,実切削により試験により検討を加えることを予定していた.しかしながら,FEMモデルによる超硬合金の直彫り加工における刃先での切削現象の再現は,まだ解析精度の観点で,信頼性を確立するまでに至らなかった.しかしながら,研究実績の概要に示した通り,これらを実験的に検討し,切削条件を種々変化させることで,間接的に良好な切削特性が得られる刃先形状について検討を加えることができた.加えて,良好な切削特性が得られることが期待される刃先形状を有するダイヤモンドコーテッド超硬エンドミルが切削工具メーカーより提案された.これらから,今後は,良好な切削特性が期待されるダイヤモンドコーテッド超硬エンドミルを用いた超硬合金の直彫り加工において,その切削特性を従前の工具と比較しながら明らかにしていく.切削特性の評価には,主に工具摩耗の進展形態,工具寿命,損耗形態,仕上げ面粗さ,仕上げ面表層の変質層有無に着目する. ドリル加工においては,平成28年度において,当初予定より先んじて基礎的な工具摩耗形態の進展について検討を加えることができた.そのため,今後は引き続き,詳細な切削特性の評価を実施していくとともに,従前より工具寿命に支配的とされるドリルマージン部摩耗の発生機構と寿命身長が可能な工具形状の提案について検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費,旅費において,当初の購入(訪問)予定に変更が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費,旅費での執行を計画している.
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