研究課題/領域番号 |
16K06010
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
早川 伸哉 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314080)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レーザ接合 / 接合界面温度 / 放射温度計 / 電場増強 / 反射光 / 放射率 / インプロセス測定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は金属と樹脂のレーザ接合法を開発するという全体構想の中で,レーザ接合時の接合界面温度を非接触で測定する方法を確立すること,および,レーザ照射中に接合界面で生じる電場増強現象を解明することである.放射温度計を用いて接合界面温度の測定を試みると,レーザ照射中に放射温度計の出力に温度とは無関係な信号が重畳して正確な温度測定が行えないという問題がある.平成28年度にこの電場増強の原因の解明に取り組んだがそれを明らかにすることはできなかったため,平成29年度も引き続き電場増強現象の解明に取り組んだ.また,その成果を踏まえて重畳信号を除去し,さらに接合中の放射率の変化も考慮して正しい温度測定を行う方法を考案した. はじめに,電場増強の原因を調査するために,レーザ接合中に接合面から放射されている電磁波の分光スペクトルの測定を行った.また,モノクロメータを用いて接合用レーザの波長成分のみを放射温度計に導光する実験を行った.その結果,放射温度計の仕様では測定範囲外であるはずの接合用レーザの反射光が混入することが温度測定を妨げている重畳信号の原因であることがわかった.そして,フィルタを用いて接合用レーザの反射光が放射温度計の測定系に混入しないようにすることで,温度測定が適切に行えることが確認できた. 次に,放射温度計が接合用レーザの反射光に反応することを逆に積極的に利用して,接合面の放射率をインプロセスで測定する方法を考案した.接合面の放射率は接合の進行に伴って時々刻々と変化するため,校正を接合前に行うだけでは測定誤差が大きいという課題がある.そこで,同じ特性の放射温度計を2台使用して,接合用レーザの反射光を含む測定値と含まない測定値を比較することで,時々刻々の反射率(すなわち放射率)が求められることを着想した.そして,放射温度計をもう一台購入して,この原理を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射温度計による接合面温度の測定を妨げていた重畳信号の原因を解明し,その対策を講じることで温度測定を適切に行えることを確認した.また,温度測定を妨げていた現象を逆に利用することで,接合面温度の測定に不可欠な放射率の時々刻々の値を求める方法を考案した.これは当初の計画では想定していなかった成果である. 一方,重畳信号を利用して接合不良の検出を行うことについては,欠陥の寸法や接合不良の状態などについてさまざまな状況で検証を行う計画であったが,前述の現象解明と新たな測定方法のアイデアの検証に多くの時間を費やしたため,十分に実験を行うことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
3年目の研究実施計画は1年目の交付申請書に記載した計画を維持し,接合面温度の非接触測定システムの構築を目指す.接合の進行に伴って時々刻々に変化する接合面の放射率をインプロセスで求める方法について,平成29年度は着想した原理の検証を行った.平成30年度はこれをレーザ接合中に実際に行えるように測定機器とデータ処理ソフトウエアを構築する.また,工作物形状やレーザ照射位置などによって異なるさまざまな接合状況に対して本方法が有効であることを検証し,接合面温度の測定システムとして確立する. また,2年目に十分に行えなかった接合不良の検出について,欠陥の寸法や接合不良の状態などについてさまざまな状況で検証を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 放射温度計の出力信号に温度以外の信号が重畳する原因を調査するためにレーザシステム2台の購入を計画していたが,現有の設備による実験で解明できたため購入を見合わせた.一方,新たに着想した放射率の測定方法を検証するために,計画にはなかった放射温度計1台を購入した.
(使用計画) 新たに着想した放射率のインプロセス測定を実現し,接合面温度の非接触測定システムとして確立するために,放射温度計2台を購入する.
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