本研究ではマグネシウム合金の表面特性向上のため、ショットピーニング技術のような粒子衝突を用いた樹脂含有金属薄板の接合を試みた。昨年度に引き続いて、樹脂ー金属交互積層膜の良好な接合性が得られる加工条件について調べた。まず、昨年度に試作した加熱装置の改良を行うため、温度制御が容易な加熱装置の試作を行った。その結果、安定な加工温度を保持できる装置であることを確認した。さらに、200度程度で金属箔との接合性が低下するポリエステル系樹脂の利用を検討して、異なる材質の耐熱性樹脂を用いて接合性の評価を行った。その結果、加工温度400度程度でも金属箔との接合性にほとんど影響のない安定した樹脂であることがわかった。そこで、新たに試作した加熱装置を用いることで、マグネシウム合金基材への耐熱性樹脂含有金属薄板の接合が可能であることが得られた。実験方法として、異種金属薄板の厚さを15ミクロンから30ミクロンとして、また耐熱性樹脂の厚さを25ミクロンから100ミクロンとして、マグネシウム基材への接合性について調べた。加熱温度は200度以上でマグネシウム合金への接合は可能で、マグネシウム合金基材への接合性も良好であることがわかった。また、接合する樹脂金属薄板における樹脂と金属の接合性の評価も行い、曲げ加工や絞り加工による塑性変形を与えても接合面での破断や割れは見られなかった。さらに、本研究では耐摩耗性も改善するため、セラミックや超硬合金のような硬質粉末を含む樹脂含有金属薄板の作製も行った。その結果、マグネシウム合金基材への接合が可能であることがわかった。機能性を評価するため、接合性の良好であった試験片に対して耐食性試験と耐摩耗性試験をそれぞれ行った。その結果、良好な耐食性と耐摩耗性を示すことがわかった。以上より、本手法はマグネシウム合金の表面改質に対して有効な技術であることが明らかとなった。
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