研究実績の概要 |
本研究では,SiC,サファイアといった次世代半導体ウエハーに対する効率的で環境負荷が小さい研磨法を開発した.この方法では,研磨運動に対して,それと直交方向に超音波振動の軌跡を重畳させる.はじめに提案手法の効果の解析を行った結果,(1)実質研磨距離の延長,(2)砥粒切れ刃の有効活用,(3)サブサーフェスダメージの低減,(4)目詰まりの低減,(5)切りくずの微細化,の効果が得られることが明らかにされた.次に,この研磨法を実現するための超音波振動砥石の開発を行った.砥石の設計には,円板の呼吸振動モードを規準振動とし,(a)砥石直径φ107mm,共振周波数f=38.3kHzの砥石台金で,粒度#800および#1,000のダイヤモンド砥粒を電着した. (b)直径φ400㎜,振動数38kHzおよび20kHzで同様に超音波振動し,シリカの遊離砥粒用および砥粒を半固定保持できるものの2種類の研磨パットを有する超音波振動砥石を開発した. 実験では,基礎実験を超硬合金により実施し,その実績に基づき半導体基板としてのサファイア,SiCに対して実験を行った.実験の結果,研磨効率は,振幅の増加と共に向上し,最大振幅条件においては,慣用研磨に対して11倍にも向上することを明らかにした.切りくずを観察した結果では,切りくずが,超音波振動の振幅を増加させるほど微細化および均質化することを明らかにした.表面粗さに関しては,最大高さが1/3程度に低減し研磨面精度が向上すること,サブサーフェスダメージが低減すること,研磨面には本方式特有のクロスハッチマークが形成することなどを明らかにした.研究成果は,提案した研磨法が極めて有効であることを示しており,今後の次世代半導体基板研磨へ展開されることが期待される.研究成果は,国内の関連学会にて数件発表し,かつ現在,国際会議での発表,論文投稿を予定している.
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