研究課題/領域番号 |
16K06020
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
坂本 治久 上智大学, 理工学部, 教授 (40276514)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 研削加工 / 砥石作業面 / プロファイル測定 / 研削仕上面粗さ / シミュレーション / 研削抵抗 / 砥粒支持剛性 / 無効切れ刃 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,より正確な研削仕上面粗さのシミュレーションを行うために,単石ダイヤモンドドレッサを用いて通常より長くツルーイングを重ねて行い,砥石作業面の切れ刃高さを揃えることを試みた.しかるに,ツルーイング後にレーザ変位計により作業面プロファイルの3次元計測を行った結果,平均砥粒径の1/3の80μm前後に及ぶ突出した砥粒切れ刃が残存してしまうように計測された.これをビデオ顕微鏡により観察した結果,確かにそのような突出した切れ刃状の突起が残ることが確認された. そこで,そのような突出した“切れ刃様突起”が研削プロセスに実効的な影響を与えるかどうかについて,研削に伴う仕上面粗さおよび作業面プロファイルの変化を追跡した.その結果,そのような仮想的な切れ刃は,研削開始の極初期に脱落してしまい,仕上面粗さにはほとんど影響を与えないことが確認できた. この結果に基づいて,研削仕上面粗さのシミュレーションの精度を向上するための処理プロセスについて検討した.具体的には,ツルーイング後に残存する実効的には作用しない“切れ刃様突起”を実効的に作用する切れ刃の平均高さと等しくなるように平準化する処理を考案した. 上述の補正的処理を加えた研削仕上面粗さシミュレーション法を,実際の研削プロセス実験に適用し,その妥当性を検討した.その結果,仕上面粗さのシミュレーション結果は,実研削時の研削抵抗と最大高さRzで計測した仕上面粗さの実測値に対して,良い一致を示すことが確認された.このことは,研削前に計測した砥石作業面プロファイルの計測結果を研削抵抗から研削仕上面粗さをシミュレーションして見積もることができることを示している.この成果は,研削プロセスの工学的な管理や制御への適用の可能性を潜在的に示しており,来年度以降の検討に活かしていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究では,従来,制御性が低いためプロセス管理が難しいとされてきた研削プロセスを工学的合理的性に基づいて管理あるいは制御できるようにすることを目指したものである.これを実現するためには,ランダムさが支配する砥石作業面の切れ刃分布を定量的に把握することと,研削特性として最も重視される工作物の仕上面粗さを見積もったり予測したりすることを可能にすることが求められる. 平成28年度の検討により,前者に対して“作業面プロファイルの機上計測”を可能とするとともに,後者のために前述に基づいた“工作物の研削仕上面粗さのシミュレーション法”をほぼ確立するに至っている.この点は,本研究が着実に目標に向かって成果を上げてきていることを示している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,平成28年度のこれらの成果を,目標達成のために,実際の研削プロセスに広く適用できるようにする技術の向上を図ることが求められる.具体的には,以下の項目について検討を進めていく予定である: ①ドレッシング条件に伴う砥石作業面の切れ刃分布の変化特性を把握し,研削砥石上の切れ刃分布を単なるランダムな分布からある程度制御されたものへと替える新たな県s買う砥石作業面創成法を確立する. ②作業面プロファイルの機上計測と研削抵抗計測による仕上面粗さのシミュレーション手法が幅広い研削プロセスに対して適用可能であることを,実験的に検証する. ③砥石作業面状態の管理された創成プロセスを活用した精密研削のプロセス制御手法の確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
実際の支出額の積算がほぼ支給額の満額に近くなり,わずかな額が未使用で残ってしまった.額が小さ過ぎるため,適切な支出が難しいと考え,次年度使用額とした.
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次年度使用額の使用計画 |
主として,実験消耗品の支出の一部に充てたい.
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