切削・研削加工によって創成された中間周波数形状のモデル化については,表面計測で得られる物体形状点群データから異方性圧縮SLIM法により陰関数曲面を生成し曲面データを出力するアルゴリズムを作成し,検証を行った.異方性圧縮SLIM法の点群比率や近似値が変更されると曲面の破れや精度の低下などの問題が判明した.その結果,最適なSLIM面を生成する条件に関する指針が得られた. 研磨加工による中間周波数形状の遷移予測のための基礎研磨実験については,超音波援用研磨装置を用い,金型表面形状の微小領域修正を試みた.ウレタン工具を用い,幅3mm以下の未詳な領域の除去を確認した.送り速度や圧力を変えることで研磨レートが変化することが見いだせた. 長田パッチを用いた光線追跡法については,光線追跡法の高度化ならびに光束追跡法の適用へのの模索を行った.レンズの形状誤差が輪帯ボケに与える影響やレンズのどの面がどの程度輪帯ボケに関与しているのか検討した.Zernike関数による光線追跡法を用いた基礎的なシミュレーションによると,輪帯ボケを表現するためには1条件あたり10万本程度の光線の評価が必要となることがわかった.そのため輪帯ボケが中心軸に対して回転対称である場合においては,評価ピクセル面の信号を中心周りの角度方向に積算し中心からの距離が同一のピクセルのデータを積算し平均化することで,輪帯ボケの強度むらを少ない光線数で定量的に評価することを可能とした.また,長田パッチを用いて中間周波数帯の輪帯ボケを再現することに成功した.高速追跡法に関しては,光線追跡によって得られた光線の配置をドロネー三角形分割を用いて接続情報を得て評価面における光線の粗密を評価することに成功した. 以上の結果から加工プロセス中途において光学性能を再現し,輪帯ボケの少ないレンズ形状を得る研磨パスを工程設計することが可能となった.
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