Zr55Al10Ni5Cu30金属ガラスの構造緩和の進行速度は温度と時間によって変化する。つまり金属ガラスの過冷却状態を利用して接合を行うには、温度と時間と過冷却状態の安定性の関係を正確に把握してコントロールする必要がある。そこで本年度はDSC(示差走査熱量測定)を用いて一定温度に保持した状態での熱流束を測定して過冷却状態の熱的安定性を評価した。 DSCによる熱流束測定から保持温度460℃では1800sで結晶化に伴う熱放出が観測された。470℃以上でも高温になるに従い、より短時間側に鋭い熱放出のピークが観察された。温度が高くなるほど過冷却液体の原子の拡散能が上がり、原子再配列(結晶化)が進行するという予想通りの結果が得られた。 また電気炉で同じ熱履歴を試験片に与え、X線回折で結晶構造の評価を行った。460℃で所定時間熱処理した金属ガラス試験片のX線回折から、保持時間が0~1200sまでは30°から50°付近にアモルファス特有のブロードなハローが観察されるが、1500s以上ではブロードなハローに加えて結晶相からの鋭い回折ピークが観察された。従ってこの場合、過冷却状態の潜伏時間は1200sであり、1500sで結晶化が始まったと考えることができる。DSCで計測した潜伏時間(1800s)とほぼ一致した結果が確認された。 これらのデータを用いて保持温度と保持時間が過冷却状態の潜伏時間に及ぼす影響をTTT線図(温度-時間相変態図)にまとめた。
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