Au60Cu15.5Ag7.5Si17金属ガラスを作製した。示差走査熱量測定DSCによりガラス遷移温度Tgは85℃、結晶化温度Txは120℃であることが分かった。またDSCにより時間温度変態曲線(TTT線図)を作成したところ、Au60Cu15.5Ag7.5Si17金属ガラスは比較的安定な過冷却状態を有することが分かった。そこでヒートガンを用いてガスジェットを発生させAu60Cu15.5Ag7.5Si17金属ガラス試験片に照射して過冷却液体接合を試みた。 ヒートガンのキャリアガスにはArを用い、流量は100slmとした。ヒートガンの先端のノズル径はφ2mmとした。またヒートガン内部の電熱線に適当な電力を供給することでガス温度が100℃の高速Arガスジェットをノズル下流に5mm程度安定して放出することができた。また金属ガラス試験片に熱電対を取り付け、実際にヒートガンを照射して試験片の温度を測定したところ、ノズル直下を中心に半径2mmの領域で温度をTgからTxの範囲に維持することができた。これによりノズル直下近傍では、ただちに結晶化させることなく、しかし過冷却液体状態に遷移するような場を作り出すことができた。 この条件を用いて、突合せた一対のAu60Cu15.5Ag7.5Si17金属ガラス試験片に、ヒートガンをスポット照射して過冷却液体接合を試みたところ、過冷却液体への遷移に伴って照射部分が軟化し、また高速Arガスジェットのガス圧により突合せ界面の塑性流動性が激しく起こり、結果として接合部が形成した。 組織分析の結果から接合部では結晶化した部位は観察されなかった。ガス温度をTg~Txに制御したたヒートガンを用いることで、金属ガラス試験片を結晶化させることなく過冷却液体接合することに成功した。
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