研究課題/領域番号 |
16K06029
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
吉村 敏彦 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 教授 (20353310)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウォータジェットキャビテーション / 超音波キャビテーション / 機能性キャビテーション / 高温高圧マイクロジェット / 光触媒 / 水素吸蔵材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、従来にない機械的作用と電気化学的作用を有する機能性キャビテーションの基本的特性を解明する。機能性キャビテーション(MFC)の機械的作用によりナノレベルの表面加工を施すとともに、電気化学的作用により表面のバンド構造を変化させる。これらの作用を利用し、太陽光をエネルギー源とした水素を高効率で発生させる光触媒材料を開発する。さらに、MFCを水素吸蔵材料に施すことで、比表面積が増加するとともに水素化物の形成が促進され、光触媒で発生した水素を高充填密度で吸蔵できる水素吸蔵材料を提供する。 ウォータージェットキャビテーション(WJC)発生部に超音波を照射する。WJCは超音波照射による音圧がブレーク閾値を超えると膨張し、一定の大きさまで膨張するとレーリー収縮する。この等温膨張・断熱圧縮の繰り返しにより、ホットスポットを含んだMFCとなる。本現象を理論的に解析し、実験結果と一致することを示した。このMFCが崩壊し始めると同時に固体表面に近づくと、物体表面に突き刺さるようなマイクロジェットを形成する。従来にない大型サイズ(数百μm)で高温(数千℃)・高圧(約1000MPa)のマイクロジェットとなり、いわゆるマイクロ鍛造と言える。 平成28年度は、ウォータージェット噴射圧力や超音波周波数、超音波出力、超音波照射角度、超音波照射距離等のパラメータサーベイを行い、光触媒および水素吸蔵に適したMFCの生成条件を確立した。 また、小型機能性キャビテーション装置を開発し、処理粉末の回収を短時間に行うことができるようになった。また、MFC処理に用いる液体を従来の水道水から超純水に替えることにより、光触媒特性の定量化を図ることができた。さらに本研究の波及効果として、MFCを用いたバブル核融合の可能性について理論的に検証した。また、液体を水からアセトンに替えたバブル核融合実験装置の試作も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の機能性キャビテーションのメカニズム解明と高度化では、ウォータジェットキャビテーションに超音波照射する位置など、有効な機能性キャビテーション発生させる条件を実験的かつ理論的を明らかにした。平成28年度は、以下のパラメータサーベイを行い光触媒および水素吸蔵に適した機能性キャビテーションの条件を確立した。最適な処理条件としては、ウォータージェット噴射圧力は35MPa、超音波周波数は28kHz、超音波出力は225W、超音波照射角度は90°(WJ噴射方向に直角)、超音波照射距離は1波長(54mm)であった。また、ウォータージェット気泡を等温膨張、断熱圧縮して、高温高圧キャビテーションにするには超音波照射するウォータージェット気泡の流速を毎秒数メートルと十分低下させる必要があることが、実験的かつ理論的に明らかになった。本研究成果を米国シアトルで開催されたThe 23rd International Conference on Water Jettingで発表した。 また、小型機能性キャビテーション装置を開発し、処理粉末の回収を容易に行うことができるようになった。また、キャビテーション処理に用いる液体を従来の水道水から超純水に替えることにより、光触媒特性をより定量的に測定することができるようになった。 さらに本研究の波及効果として、機能性キャビテーションの高温高圧気泡を用いたバブル核融合の理論的評価に成功し、液体ジェットとしてアセトンを用いたバブル核融合実験装置の試作も行った。本研究成果もThe 23rd International Conference on Water Jettingで発表することができた。 以上のことより、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
機能性キャビテーションのマイクロジェットは、崩壊時に機械的かつ電気的作用を有するマイクロジェットが表面の幾何学的形状変化のみならず表面のバンド構造の変化を与える。これにより、光のエネルギーE(E=h・ν=h・c/λ)可視光でも水分解により水素発生が促進される。 平成29年度は、開発した小型機能性キャビテーション処理装置を用いて、以下のパラメータサーベイを行い水分解特性の高い光触媒材料を開発する。①酸化チタンの結晶構造(ルチル型、アナターゼ型)及びストロンチウムチタネート(SrTiO3)、②酸化チタン及び(SrTiO3)の粒子サイズ(100~400nm)、③助触媒の種類(白金、酸化ニッケル)、④助触媒のサイズ(1~85μm)、⑤MFCの処理条件 平成30年度は、機能性キャビテーションの機械的作用によるナノレベル微細化と電気化学的作用により水素化物の生成促進を目指す。対象とする水素吸蔵材料としては、Al合金やMg合金、カーボンナノチューブ(CNT)の軽量材料とする。また、次のパラメータサーベイを行う。①材料(Al、Mg合金、CNT)、②粉末のサイズ、③MFCの処理条件 本研究の成果により、軽量で安価なアルミニウムを主原料とした、燃料電池自動車のための高性能な水素貯蔵技術を実現するためのブレークスルーが起きると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の購入品が当初計画と一部変更になり、僅かな残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の使用計画内で、H28年度の残額を調整する予定である。
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