ウォータージェットキャビテーション(WJC)に超音波を照射すると、WJCの等温膨張・断熱圧縮により、機能性キャビテーション(MFC)となる。MFCは従来にない大型サイズ(数百μm)で高温(数千℃)・高圧(約1000MPa)の気泡であり、崩壊時には表面に強い衝撃波を与え、各種材料の高機能化を図ることができる。本研究では、以下の技術課題を検討した。 (1)MFCのメカニズム解明と高度化(2016年度)光触媒および水素吸蔵の性能を向上させる加工条件は、WJ噴射圧力35 MPa、ノズル試料間距離65mm、超音波は周波数28 kHz、近接2周波切替発振モード、最大出力800W、試料振動子間距離54 mmであることを示した。 (2)MFCによる光触媒材料の開発及びエネルギー変換効率の向上(2017年度) (1)の条件で加工した酸化チタン等の光触媒材料は、MFCの機械的作用によりナノレベル加工され、電気化学的作用によりバンドギャップが低減することをケルビンフォース顕微鏡等の測定により示した。そして可視光照射下で水素を高効率で発生させる光触媒材料を作製した。 (3)MFCによる水素吸蔵材料の開発(2018年度)MFCの機械的作用によるナノレベル微細化と電気化学的作用によりAl合金粉末等がナノレベルで微細化され、水素を高充填密度で吸蔵できる水素吸蔵材料を作製した。 (4)小型MFC加工装置の開発(2019年度)大型MFC装置(ノズル径0.8mm、圧力35MPa、流量7L/分、容積110L)を用いたため、加工粉末の回収に時間を要し、超純水加工ができず粉末の純度が不十分という課題があった。そこで、細穴放電加工機で最適ノズル(径0.14 mm)を作製し、小型MFC装置(圧力40MPa、流量150mL/分、容積8L)を開発した。これにより課題が解決され、化学、バイオ等の新分野への適用が可能になった。
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