各種シールの中において、ガスケットは対向する静止壁面間の接触式密封装置に位置づけられる機械要素であり、様々な産業機械から日常的な生活用品に至る、極めて多岐に亘る分野や環境で利用されている。密封性を高めるためには、通常、締め付け力を高めることで隙間を減じ、微小な流路を断ち、流体の漏れを防ぐ。しかしながら、接触荷重の増加は、必然的に部材の変形や表面の損傷を伴う。また、密封を求められる部位の固体表面における粗さやうねりの存在ならびに締結材の緩みや装置の振動などは、部分的あるいは一時的なチャネルを形成させる要因となり、密封性が破られる。取り分け、厳しい条件や特殊な環境のもとでは、構成部品の組合せや分割を前提とする容器に対する流体の完全な封止は、著しく困難である。 本研究は、密封部分の温度分布を能動的に与えて液体の粘度を制御することにより、従来、考えられていなかった方法により漏洩を阻止するガスケットを開発することを目的として開始した。主な特徴のひとつは、使用する液体は被密封液体そのものであり、特殊なシール液体を用いない点にあり、安全性、信頼性、環境性を担保している。 平成30年度は、平成28年度ならびに平成29年度に試作ならびに試験を行った結果に基づき、その装置に改良を加えて実験を進めた。概要は以下の点に纏められる。前年度までに得られた知見を有効活用して、姿勢や振動下における検討を行うために、供試ガスケットおよび試験システムの一部を改造した。前者については比較的に良好な結果が得られた。一方、後者についてはピエゾアクチュエータの導入や既存の機器類の活用等も含めて進めたが、条件設定や装置調整、計測精度などの問題解決に難航し、振動条件下における結果については予備実験の段階に留まり今後の課題として残された。全体としては試験機の設計、製作、実験を通して、本考案を検証するに至ったと総括できる。
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