平成29年度までに実施したM10強度区分10のフランジ付ナット(規格品:二面幅15mm,高さ10mm)と新しく設計した軽量フランジ付ナット(二面幅13mm,高さ8.4mm)試験片とM10,強度区分10.9のボルトとの組合せに対する静的強度(ねじ山のせん断破壊強度)及び疲労強度の比較検討によって,軽量フランジ付ナット実現の基礎資料が得られたため,今年度は,さらに条件が厳しいM8の軽量フランジ付ナット(二面幅10mm,高さ5.8mm)について,ねじ山の静的強度,ねじ部製造に関わる精度的な問題,締付けにおける頭部の強度,組合せるボルトの疲労強度について実験的な検討を行った。製作性に関しては,機械加工したナットブランクを汎用のベントタップ型タッピングマシンで,ねじ立てし,十分な精度で製造可能であることを確認した。静的強度に関しては,かみあい山数の減少により,ねじ山のせん断破壊強度は低下するが,ナット材料の選択により,ボルトねじ部の負荷能力と同程度とすることができ,締付けにおける頭部の強度も十分であることを実験的に確認した。また疲労強度に関しても,二面幅の減少による剛性の低下により,応力集中の緩和が起こることから,従来品と同程度の疲労強度を有していることが実験的に確認できた。これらの結果から,実用化が可能であるとの結論を得た。ただし,疲労強度に関係する第1ねじ谷底の応力集中については,新しく考案したズーム法を適用した3次元FE解析によって詳細に調べた結果,ナット座面側不完全ねじ部及び面取りが及ぼす影響が大きいことがわかり,面取り角度は従来の90°ではなく,120°の方が好ましい事がわかった。
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