研究課題/領域番号 |
16K06045
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
西川 宏志 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (40208161)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トライボロジー / 油膜 / 厚さ / 粘度 / 圧力 / 高圧粘度 / 粘度圧力係数 / 温度 |
研究実績の概要 |
転がり軸受や歯車などの外接的接触をする機械要素の潤滑状態である弾性流体潤滑(EHL)下における機械要素の性能向上に必要不可欠な油膜挙動を把握することを目的とし、球と円板からなるEHL接触下の膜厚分布計測・温度分布計測・圧力分布計測法の改良およびEHL油膜挙動の実験による解明を進めた。今年度は、特に接触面に垂直な運動下での油膜閉込め現象による粘度圧力係数計測法について、以下のような進展があった。 1. ミクロンオーダの初期膜厚を有した状態から衝撃的に接触させた場合の閉じ込め油膜厚さと干渉像から得られた実際の表面接近速度、油種の関係を明らかにした。2. 先の1で用いた表面速度よりも実機での運動条件に適用が容易な接触物体の速度をパラメータとし、数百ミクロンオーダの初期膜厚を有した状態から衝撃的に接触させた場合の閉じ込め油膜厚さと計算・計測が容易な接触物体の速度、接触球半径、油種の関係を明らかにし、油膜厚さ計算式を提案した。3. 上記で求めた閉じ込め油膜厚さをコントロールし、接触面に微細人工溝を形成した場合の閉じ込め油膜流出挙動と油種の関係を明らかにした。さらに、1, 2 から、大気圧下粘度、接触球半径、接近速度が分かれば、通常は計測が非常に困難な粘度圧力係数が計算できること、3より流出挙動を調査することで粘度圧力係数が求まる可能性があることを示した。 得られた成果の発表として、平成28年度は、国際学会での発表2件および国内学会での発表2件を行った。また、平成29年度に国際学会での発表2件、国内学会での発表2件を行うことが確定している。さらにこれらの成果について、学術雑誌への論文投稿の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉じ込め油膜の挙動に関する研究は、油膜厚さ計算式確立、高圧粘度計測法および粘度圧力係数計測法について、当初の計画で予想したよりも多様かつ有用な実験結果が得られ、大きな進展があった。これは今後の研究により一般的に多くの機械要素で使える計算式、多様な油種・化学物質に対して適用可能な粘度圧力係数計測法に展開できると考えている。 膜厚分布計測・温度分布計測・圧力分布計測法については、使用する光源の波長幅の選択、使用する接触面膜の構成などの改良を進めており一部当初計画より遅れている部分があるものの、全体としては有意義な成果を得ており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
閉じ込め油膜挙動について一般化した式を確立するため、考えうるパラメータ、例えば接触物体の弾性係数、剛性、広範囲な油種について試験を行う。研究協力者による数値計算を用いた検証を行う。また粘度圧力係数計測法の確立に向けて、接触圧力や接触面の表面形状、広範囲な粘度圧力係数を持つ油種について試験し、最適試験条件の確立を目指す。 膜厚分布計測・温度分布計測・圧力分布計測法に関しては、これまでの改良をさらに進めていく。特に干渉像の鮮明化、より厚い膜厚に対応できるよう光源の波長特性、撮影系などの改良を迅速に行い試験の高精度化を目指す。
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