研究課題/領域番号 |
16K06048
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
樋口 勝 日本工業大学, 工学部, 教授 (40293039)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パラレルメカニズム / 2自由度球面機構 / 運動伝達性 / ワイヤ駆動機構 |
研究実績の概要 |
高機構透明性・高剛性の駆動機構の開発として、支点の位置を能動的に変化さて剛性を調整できる板ばねと複数のプーリ・ワイヤとを組み合わせた可変剛性機構を提案し、2段階で剛性を変化させることのできるシンプルな可変剛性機構を設計・試作した。また、駆動機構にクラッチを用いて出力節とアクチュエータとを切り離す機構として、スプリングクラッチ的に、駆動ワイヤを機能させる機構を提案・設計した。しかし、この機構は複雑で、試作機を製作したものの上手く機能させることができなかった。さらに、高機構透明性と高剛性を両立する方法として、減速機を用いず、径の小さいプーリに複数回ワイヤを巻きつけ、直接ワイヤをモータで駆動する機構を提案・設計・製作し、ワイヤの巻き数と伝達できる力の最大値との関係を把握した。この機構は設計した性能を実現したものの、ワイヤの取り回しが煩雑であり、実験中にワイヤ関係の不具合が多発したため、実用には、ワイヤの取り回しの改良が必要である。 人の精緻な作業の観察は、当初はLeapMotionを用いた指先の運動の把握を考えていたが、本機構の対象とする運動としては、動きが小さすぎる為、より大きな動きであり、熟練者の技能により仕上がりに差が出る作業として塗装を選び、熟練者の塗装作業を計測する装置を設計・製作し、運動計測を行った。人の腕の自由度は7であるが、製作した運動計測装置が6自由度であったために、計測中に特異点に入ってしまい計測が中断することがあった。また、計測したデータを用いてロボットに同じ動きをさせることをシミュレータ上で確認したところ、本研究で開発しているパラレルメカニズムも6自由度であるため、特異点近傍で関節に非常に高速な運動が要求される状態が生じた、運動が困難になることがわかった。精緻さには腕の冗長性が大きな影響を及ぼしていることが再認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度に開発予定であったACサーボモータを用いた試作機の製作が行えていない。これは、この試作機を製作するまえに、設計の問題点を把握するために、単純なラジコン用サーボモータを用いた小形の試作機を設計・製作することはできたものの、この小形試作機により把握できた、剛性の問題、リンクの干渉の問題を解決できていないためである。とはいえ、小形試作機では、設計の有効性の大部分は確認できたため、来年度は、ACサーボモータを使用した試作機を設計・製作する予定である。 また、平成29年度に行う予定であった、駆動機構についても、試作機は設計・製作できたものの、ワイヤの取り回しに関していくつかの問題があることがわかり、これを解決する必要がある。 さらに、人の精緻な作業の観察についても、観察するための環境がある程度整い、運動計測したものの、計測装置に問題があることがわかり、また、人の精緻な運動をロボットで行ウにあたっての自由度の違いにより問題がることも分かり、これらを解決する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度中に終えることができなかった人の精緻な作業の観察を行うと同時に、計画通りデスクトップサイズの機構の開発を行う。平成29年度に製作した小形試作機はデスクトップサイズであり、この設計・製作において、本年度開発目標としている機構を設計する上での多くの知見を得ることができたため、この設計・製作は予定よりも早く進めることができると考える。なお、駆動系については可変剛性機構や特殊な減速機等のワイヤを複雑に取回す機構を用いることを避け、より現実的な方法として、ダイレクトドライブモータを使用することで、機構透明性と高出力とを両立することを考える。また、スキルアシスト法については、人の精緻な作業の観察結果に基づき開発する必要があるが、現在までに得られた知見では、人の特徴的な動きを抽出することで、動きを分類することが出来そうであり、分類した動きをより詳細に検討することで、それぞれの動きに対応したアシスト方法を適用することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ACサーボモータ駆動の試作機を製作する予定であったが、設計中に色々な問題が懸念されたために、これを製作する前に、小形の試作機を製作・実験することで問題点の抽出をすることを行った。しかし、問題の解決に時間がかかってしまったために、ACサーボモータ駆動の試作機を製作することができなかったことが理由である。なお、現在は、この問題を解決する方法として、ダイレクトドライブモータを使用することを考えており、これにより平成30年度は、計画しているデスクトップサイズの試作機を製作することができると考えている。
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