研究課題/領域番号 |
16K06051
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉本 成香 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (80096718)
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研究分担者 |
宮武 正明 東京理科大学, 工学部機械工学科, 准教授 (70434032)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モータ / 高速回転 / 真空 / 粘性ポンプ / 動圧型空気軸受 |
研究実績の概要 |
近年,次世代ハイブリッド自動車や電気自動車用の駆動モータとして,SR(Switched Reluctance)モータが注目されている.このSRモータは,回転子,コイルと制御装置により構成され,磁石を必要としないため,レアアースの入手性や価格高騰のリスクが生じない.しかし,SRモータは,突起の付いた複雑形状の回転子を用いる必要があるため,モータの小型・高出力化にともなう高速回転化に際して,風損や風切音の増加が問題となっている.そこで研究者らは,モータの回転子の周囲圧力を,スパイラル溝粘性ポンプと動圧軸受を組みあわせた非接触粘性ポンプにより減圧することで,風損を低減する方法を提案した.この構造では,回転数10000rpmで0.3気圧程度の減圧が可能なことが示されたが,動圧軸受が有効に機能しない回転の始動停止時には,粘性ポンプを支持する弾性体の反発力により,粘性ポンプを持つ円板が軸円板部と接触した状態となる等の問題点があり,粘性ポンプすきまの調整機能を向上させた構造の開発が必要であった.そこで本研究では,すきま調節機能向上させた新たな粘性ポンプ構造を提案し,ポンピング特性について実験的に検討を行い,提案する構造を設計する上での指針を得ることを目的とした. 結果として、設計製作した風損低減機構を用いて、以下のことが実験的に明らかとなった。 (1) 回転数15000rpm,シールすきま10μmにおいて0.3気圧以上の減圧効果を確認した.また減圧量は,回転数の増加とシールすきまの減少にともない増加するが,シールすきまの影響がより大きい. (2) 減圧量の過渡特性は,回転数とシールすきまの影響を受け,回転数の増加とシールすきまの減少にともない,最終到達圧に達するまでの時間は増加する.また1s以内に、最終到達圧力に達することが実験的に確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.モータ回転を利用した風損低減機構の開発 本研究では、モータハウジング内の圧力を低減するために、モータの外側に取り付け可能な風損低減機構を提案した.この風損低減機構は,空気動圧軸受と粘性真空ポンプを設けたポンプ円板とポンプハウジングから構成されており、ポンプ円板の両側に自動的にすきまを形成することができる機能を持っている。 28年度は、まず提案する風損低減機構の真空ポンプとしての性能を明らかにするために、風損低減機構の製作を行った。そしてモータハウジング内の到達圧力およびモータ回転時からのモータハウジング内の圧力変化について測定を行い、真空ポンプ機能の有効性を確認した。 2.風損低減による動力損失抑制効果の実証 28年度はさらに、モータのロータを想定した円板を持つ軸を空気中および真空中で回転させ、それぞれの駆動動力をモータ電流から測定することにより、風損低減装置の動力損失抑制効果を実証する予定であったが、実験装置の設計製作が遅れ、その測定までには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.風損低減による動力損失抑制効果の実証 28年度に実施予定であったモータのロータを想定した円板を持つ軸を空気中および真空中で回転させ、それぞれの駆動動力をモータ電流から測定することにより、風損低減装置の動力損失抑制効果を実証する。よってこの測定のための実験装置製作に注力する。 2.風損低減機構に加わる周期的外力および衝撃力の影響 メイン駆動用モータを実際に自動車に搭載した場合には、種々の外乱が加わることが予想されるので、外乱に対する風損低減機構の挙動を明らかにしておくことが、実用上きわめて重要となる。29年度以降は、外乱として、周期的外乱振動および衝撃力を取り上げ、ポンプハウジングの挙動について、実験的、数値的に明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度においては、提案する風損低減機構を製作し、実験的にモータハウジング内の圧力を低下できることを実証した。しかし回転モータの軸の設計製作に時間がかかり、動力損失抑制効果の実証実験を行うまでには至らなかった。よってこの実験装置加工費については、翌年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
動力損失抑制効果を測定するための実験装置、および外乱が加わった場合における風損低減機構の挙動を明らかにするための実験装置および測定機器に使用する予定である。
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