研究課題/領域番号 |
16K06056
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
野崎 孝志 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (20548888)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 等速性 / 偏心量 / 動力伝達効率 / 動力吸収 / 非線形動力学 / 摩擦係数 / Hertz接触 / すき間 |
研究実績の概要 |
本研究開発の目的は、超大偏心量許容形等速軸継手の部品間のすきまやHertz接触などを考慮した理論解析と実験から、等速性と動力伝達率への影響を明らかにすることである。さらに、限界偏心時の特性を実験により確認し、解析により限界偏心時の特性を理論的に把握することである。初年度である平成28年度においては、計画通り次の3項目を実施した。 ①等速性及び動力伝達効率測定試験機の製作完了: この試験機は、入力側に配置されたサーボモータにより、軸継手に対して一定速回転入力(最大3000min-1)を与え、出力側に配置されたパウダブレーキにより動力吸収を行う構造である。軸継手の入出力両側にはそれぞれトルクメータとロータリエンコーダ(1回転6000パルス分解能)を配置し、等速性および動力伝達効率の同時計測可能なものとしている。特に等速性については、微小な回転変動を計測する必要があるため、0.06degの角度分解能を有している。 ②非線形動力学解析基本モデルの作成完了: すき間やHert接触などの非線形要素を考慮した非線形動力学解析基本モデル(3次元解析モデル)の作成を完了した。モデルの溝形状については、本年度当初予定していたサーキュラアーク溝だけでなく、ゴシックアーク溝についても基本モデルを完成した。まずは、接触部の解析上の摩擦係数を0.01として解析を行った結果、回転変動率の実験結果と定性的に一致していることを確認することができた。 ③動力伝達効率測定実験(動力伝達効率から非線形動力学的解析の摩擦係数の同定): トルクメータと回転数から、動力伝達効率の算出を行っている。その中で、回転数計測の角度分解能が高いため、ノイズと思われる変動成分がデータに加算されている。これらをフィルタリング処理し、動力伝達効率を算出する。ここで算出された動力伝達効率と回転変動率から、解析上の摩擦係数をさらに同定していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超大偏心量許容形等速軸継手の研究開発の2つの重要な要素である実験と解析において、基本となる『等速性及び動力伝達効率測定試験機』の製作が完了したことと、『非線形動力学解析基本モデル(3次元解析モデル)』の作成が完了したことは、この研究を遂行する基礎ができたことである。等速性及び動力伝達効率測定試験機のデータ取得も等速性については順調に行われているが、動力伝達効率については、ノイズ成分が加算されていることを発見し課題として抽出された。これらはフィルタリング処理などを行うなどの対策を講じている。非線形動力学解析基本モデル(3次元解析モデル)については、本年度当初予定していたサーキュラアーク溝だけでなく、ゴシックアーク溝についても基本モデルを完成することができ、解析については研究計画より大きく進捗させることができた。 実験と解析の基礎が完了し、試験機については若干のデータ処理上の調整は残すものの、解析モデルについては、当初計画を上回る進捗が得られたことから、『(2)おおむね順調に進展している。』と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、昨年度の試験機データ処理上の調整と合わせて、予定通り下記の項目を詳細に実施していく予定である。当初予定していたサーキュラアーク溝だけでなく、ゴシックアーク溝の解析基本モデルも完成していることから、これらの両方の溝形状について、下記を実施していく予定である。 ④非線形動力学解析によるパラメータスタディ(等速性変動要因および動力損失要因の抽出) 作成した本軸継手の非線形動力学解析基本モデルを用いて、等速性の変動要因を抽出し、等速性の変動を0.5%以下に抑制する最適形状を決定する。等速性の変動要因を抽出するためには、主に部品間のすきまなどをパラメータとし、非線形動力学解析を行う。具体的なパラメータとして、保持器の孔とボールのすきま、保持器と回転部材の軸方向すきま、ボールと案内溝の回転時の接触角、ボールに対する案内溝の半径(初期状態は1.02倍)、および保持器の孔形状(緩やかなRとする)などが挙げられる。また、動力損失要因としては、揺動運動による摩擦力の変化などが考えられる。揺動運動では、ボール(ボールだけでなく回転部材間を軸方向に締結しているねじと含油焼結ワッシャ)が一旦停止し、速度の向きが変わることになり、静止摩擦が現れる。パラメータスタディの時点で、揺動運動による摩擦力の変化が動力損失に与える影響が大きいと判断される場合には、摩擦係数の速度依存性を加味し、ストライベック線図から静止摩擦だけでなく、境界潤滑、混合潤滑、流体潤滑を考慮した摩擦係数変化を考慮した摩擦係数の同定を、精度を上げて行う可能性も視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度計画していた日本機械学会年次大会学会発表(九州大学)を、日本機械学会東海支部学会発表(静岡大学)に変更したため、主に旅費の差等により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、本年度の学会発表(日本機械学会年次大会等)にて使用する。
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