平成30年度においては,計画通り⑤非線形動力学解析と実験による限界偏心時の特性把握を実施した.平成29年度は,当初の計画をより発展させて,ばねによって適切な予圧を作用させることのできる新規改良機構を考案し開発試作した.この改良は,動力学解析モデルによりゴシックアーク溝の溝中心にボールを安定させ,回転変動率を低下させるために有効であることが確認できたため,本年度はこの構成を基に実験装置として,軸継手内部に作用する力を測定する装置を考案し,設計製作及び実験を行った.この実験装置は,ボールが接触する溝を別体構成とし,その間にピエゾ形圧電素子を配置している.さらに,溝の位置精度を向上させるために,ボルト固定後に再度溝形状の加工を実施し,溝を一体加工した場合と同様な精度を得ている.この実験装置により,軸継手内部に作用する力の測定が可能になり,動力学理論解析との比較整合性の検証が可能になった.限界偏心時の再現自体を実験装置により実施すると,実験装置が破損し,正しい計測が不可能になる場合がある.そこで,限界偏心やオーバーロードの再現は,解析モデルにて実施することにする.この内部力測定の実験結果により,実験と動力学理論解析との整合性は,定性的には一致しており,1回転中2回の力のピークが確認できている.この箇所で適正なHertz接触面圧になるように,作用トルク,回転数,及び偏心量を決定すると良いことがわかる.実験と動力学理論解析とを定量的に一致させるためには,摩擦特性の変化などを理論的に考慮する必要があり,今後の研究を待たなければいけないが,回転中の回転角度相対位置(ボール,溝,及び保持器)にて,限界偏心時の特性を把握できることがわかったことは,新規改良機構案,理論解析モデルの有効性の確認とともに大きな成果であった.これらの理論解析と実験解析を基に設計基準となる寿命特性への研究と繋げていく.
|