研究課題/領域番号 |
16K06060
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大橋 太郎 木更津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (20259823)
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研究分担者 |
西澤 宇一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80553221)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 設計工学 / アクチュエータ / 宇宙空間 / 圧電素子 |
研究実績の概要 |
科学技術の進歩に伴い国内外で宇宙開発が活発に行われている。人工衛星や国際宇宙ステーションなどの宇宙機の姿勢制御にはスラスタが用いられている。運用後の宇宙機がスペースデブリにならないように、大気圏へ再突入させ焼却する方法や高高度へ軌道を修正する方法が提唱されており、廃棄の目的でもスラスタが用いられている。現在多くの宇宙機のスラスタは向きが固定されているため、宇宙機に複数個の設置が必要でペイロードを圧迫している。本研究では、スラスタの向きを自由に可変でき、複数個あるスラスタの機能を1つにまとめられ、少ない個数で冗長性を持たせることができる宇宙用多自由度アクチュエータ「球面超音波モータ(SUSM:Spherical Ultrasonic Motor)」を研究し、設計開発することである。
本年度は基本特性試験として、回転数、トルク、耐久性における各測定の確立を行うため、SUSMの実験装置を作成した。作成した実験装置を用いて、大気中で回転数の測定を行った。運動に一番負荷のかかる駆動として、宇宙用SUSMに(ステータ1、ステータ2、ステータ3)=(0度、60度、-60度)の各位相差をもった交流信号を印加し、Y軸正方向の繰り返し運動をさせた。その際の出力棒の運動をビデオカメラで撮影し、圧電素子の温度を熱電対で計測した。温度可変の恒温槽において低温域・高温域にさらした熱サイクルを行い、回転数、トルク、耐久性に関する実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の半年を経過し、外注依頼で作成する圧電ユニットは各工程に多くの時間を有することがわかったため、加工が可能な部品から早期作成を行った。当初予定していた平成29年度以降に行う圧電素子のライニング材の検討において、圧電素子ユニットやそれらに関する実験装置の早期作成に着手した。圧電素子ユニットは耐久性試験において作成個数が30個以上と大変多く、ばらついた性能のユニットは使用できないものとなる。同じ性能のロット作成、時間的ロスの低減、研究の進展などを図った。作成した圧電ユニットはさまざまな熱衝撃試験での特性を評価するために用いる。
各種実験を通じて、圧電素子の性能を確認するためにインピーダンス計測を行っているが、その時間がかかりすぎる問題が生じたため、小型で安価なインピーダンスアナライザを代替計測器に利用し、計測環境のソフトウェア開発を行うことにする。
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今後の研究の推進方策 |
SUSMの出力が最大となるように、印加電圧の周波数を共振周波数と同じ値にして実験を行う。この周波数は出力が最大になると同時に、最も熱の発生がしやすく過酷な条件である。印加周波数を共振周波数から動かすとインピーダンスは低下する。このことは目標のトルクを維持した状態で、圧電素子の発熱を抑えることにつながるため、印加周波数の検討は超音波モータの耐久性向上にもつながる。真空チャンバー内はインピーダンスアナライザを用いた直接測定ができないため、コイルやコンデンサを用いた等価回路式から、真空中での周波数をSUSM出力特性の経時変化や温度特性と共に計測し、駆動周波数を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
外注依頼で作成する複数の圧電ユニットは製作と納品に時間がかかることがわかり、前倒し請求により予算を多めに計上した。年度中の納期に間に合う個数分の確保はできたが、それ以外は次年度に再発注を行うことに変更したために、結果として余剰金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
余剰金は次年度以降の実験計画を行うために必要なものであるため、当初の実験計画に変更はない。
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