研究課題/領域番号 |
16K06063
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
内田 英樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (90450709)
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研究分担者 |
安田 進 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (30450711)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アイソレータ / ダンパ / 極低温 / 渦電流 / 宇宙望遠鏡 / 人工衛星 / 擾乱 / 微小振動 |
研究実績の概要 |
本研究は、強磁性の永久磁石とアルミニウムの金属板を用いて発生させた渦電流に伴う減衰力を世界で初めて人工衛星に搭載可能な極低温環境でも擾乱(微小振動)を効果的に遮断できる機構(アイソレータ)に応用し、高精度な宇宙天文観測につなげようとするものである。 計画している具体的な研究項目は次の2つである。 1.渦電流アイソレータの極低温環境における減衰性能の最適設計 2.渦電流アイソレータの衛星搭載状態での性能予測 1.について、平成28年度では保有の振動試験設備を用いて-46度で1軸ベース加振により振動減衰特性を取得した。その際、設備の温調機能に不具合が発覚したために平成29年度では修理を行い、さらに低温の-110度での振動減衰特性を取得することができた。試験から取得したパラメタをもとに、アイソレータの数学モデルとの合わせ込みを行っている。また、アイソレータ端部間の6自由度伝達関数を取得するために製作した恒温槽付きの多軸加振装置について、部分的な改修と装置を使用する上での条件出しを行い、ランダム加振による6自由度伝達関数が取得できるところまで装置の調整ができた。 2.については、アイソレータ搭載形態の衛星模擬構体の試験コンフィグレーションを複数案検討した。この試験では、衛星模擬構体に組み込むアイソレータ部分を局所冷却するが、その際に過大な変位を発生させるとアイソレータの板バネが破損する危険性があるため、試験時の作業性とアイソレータの健全性確保の観点から試験コンフィグレーションのトレードオフを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度の振動試験で発覚した試験設備の不具合の修理は平成29年9月に完了したが、再開後は待機していた開発中のロケット/衛星プロジェクトのコンポーネント振動試験をスケジュール上優先せざるを得なくなったため、これらが完了した後の平成30年1月にアイソレータ単体の振動試験を実施することになった。このため、当初計画していたような平成29年度中に衛星模擬構体搭載形態でのアイソレータの設計を固めて製作にまで至ることができなくなった。 さらに、研究代表者の所属部内の一時的な配置転換(事業管理部署(事務系)への人事異動)により当初の研究実施計画で想定したマンパワを充てられなくなった。 これらの予期していない事態により、研究計画全体に進捗の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように当初予期していない事態となったので、研究計画調書の「研究が当初計画通りに進まない時の対応」の方針を踏まえて、平成30年度は以下の方針で研究を遂行する。 1.研究代表者の一時的な配置転換は平成29年度までであったので、平成30年度は当初の研究実施計画で想定したマンパワを充てる。 2.平成29年度までに取得した低温での振動減衰特性を用いて、渦電流型アイソレータの数学モデルを構築し、一般化した設計手法を用いて衛星模擬構体搭載形態のアイソレータを設計し、製作する。このとき、衛星模擬構体にアイソレータを搭載しても構造全体が自重でも自立できる程度の剛性をアイソレータに持たせる。これにより、アイソレータ搭載時の試験コンフィグレーションを複雑化ぜず、効率的に検証を行うことができる。 3.衛星模擬構体搭載用アイソレータの室温と低温での伝達関数を取得し、設計時の予測値と比較し、設計手法の妥当性と有効性を確認する。衛星模擬構体の上部構造と下部構造は各々室温での伝達関数を取得し、解析的に各部分構造の伝達関数を合成してアイソレータを搭載したシステムレベルでの振動減衰性能を見積もる。 4.アイソレータを衛星模擬構体に搭載し、アイソレータをペルチェ等で局所的に冷却して実験的にシステムレベルでの振動減衰性能を取得し、解析からの予測値と比較検証する。もし、複数個所を同時に局所冷却することが試験コンフィグレーション上難しい場合には、低温部は一ヵ所に限定し、他の箇所は室温として限定的な試験として実施する。低温部が一ヵ所となっても、振動減衰性能の評価は可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
振動試験設備の修理と研究代表者の人事異動により、衛星模擬構体搭載形態のアイソレータの設計検討が計画通りに進まず、経費が未執行となった。なお、平成28年度実施の振動試験の消耗品類の予備や備品を平成29年度実施分で使用したため、新たに消耗品類を調達する必要性は生じなかった。 平成30年度に繰り越した研究費は、衛星模擬構体搭載形態のアイソレータの製作と試験で使用する消耗品類の調達に充てることで使用する予定である。
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