研究課題/領域番号 |
16K06066
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
足立 高弘 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (60344769)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膜状揚水 / 糸状揚水 / 流れパターンの遷移 |
研究実績の概要 |
本研究では回転数および粘度の大小により,上昇液膜流と上昇液糸流の流れパターンが現れる.そこで初年度は,回転円すいによって揚水される流れが,作動媒体の粘度の変化に対して液膜流あるいは液糸流となるかについての流れの発生条件について調べた.作動媒体としては,水およびグリセリンを用いた.グリセリンは高粘度なニュートン流体である.上昇液膜流と上昇糸状流の流れパターンの発生条件は,円すいの頂角の大きさによっても変化すると考えられるので,それぞれの条件に対して高速度ビデオカメラを用いた可視化実験を行うことで流れのパターンを分類し,それぞれのパターンが生じる回転数および粘度と円すいのサイズ等の発生条件を明らかにした.作動媒体の粘度が水程度の大きさの場合には,液は遠心力によって膜状に揚水されたが,粘度が大きくなるにつれて曵糸性の影響が強くなる.その場合には,円すいの表面形状(凹凸)の不均一により,遠心力が周りよりもわずかに大きく曵糸性のために糸を引き始める核となるポイントが存在すると考えられる.さらに,それら放出流の揚水および微粒化や液糸化に必要となる消費動力を測定すべく装置の製作を行った.グリセリン水溶液による粘度変化を調べたところ、粘度が水から大きくなるについて,膜状揚水の発生回転数は大きくなった.途中で、下降凹み流へと遷移した後に糸状揚水流へと更に遷移が生じる。この糸状揚水流の場合には粘度の増加に伴って、発生回転数が減少することが明かとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,円すい表面の加工精度や撥水・親水性等の表面性状を変更して実験を行ううこととしていた.しかしながら,所定の粘度を有するグリセリン水溶液の作成に時間を要し,計画の通りに実験が進まなかった.また,非ニュートン流体に関する実験についても進んでいない.
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今後の研究の推進方策 |
二年目以降は,初年次に着手できなかった円すい表面の加工精度や撥水・親水性等の表面性状の影響を調べることとさらに詳しく流れパターンが遷移する条件を明らかにすること, および液滴の粒径や線条糸の長さ分布等を求める予定である.本研究で提案する線条糸生成機構を用いて生成した線条糸の噴霧特性(糸の長さや幅あるいはそれらの分布のばらつき等)を明らかにするためには,飛翔中の噴霧線条糸の噴霧特性を高い時間・空間分解能で,しかも非接触で計測する必要がある.そのために,本研究ではレーザー光源を利用した市販のレーザー回折散乱式粒子径分布計測装置を用いることにする.この装置の測定原理は,粒子に光を照射した時に各粒子径により散乱される散乱光量とパターンがそれぞれ異なることを利用している.この装置は,測定時間が短く,再現性・操作性の点でも優れており,粒子径分布測定装置の主流となっている.一般に,本装置は粒子が球形であると仮定して計算された回折・散乱光の光強度分布パターンに基づいて測定が行われる.この装置を糸状粒子に適応した場合には,その測定結果の分布範囲は最も小さな短径から最も大きな長径へと広がり,線条糸の長さおよび幅等に関する分布を得ることが可能である.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究では,作動媒体としてグリセリン水溶液とポリビニルアルコール水溶液を用いてニュートン流体と非ニュートン流体の違いを明らかにする予定であったが,ニュートン流体であるグリセリンの実験に時間を要したためポリビニルアルコールの実験に着手できず、購入費が未使用となった。また,使用する円すいの浸水性や撥水性および加工精度に関する実験にも着手できなかったため、材料費および加工費が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に着手できなかった実験項目である,作動媒体としてグリセリン水溶液とポリビニルアルコール水溶液を用いたニュートン流体と非ニュートン流体の違いを明らかにする項目と、浸水性や撥水性および加工精度に関する項目を引き続き行う予定であるため、そちらでの使用を計画している。
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