研究課題/領域番号 |
16K06068
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
長津 雄一郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60372538)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 液相反応流 / Viscous fingering / 界面レオロジー / 流体力学不安定 / LAOS |
研究実績の概要 |
反応粘弾性界面によりViscous fingering (VF)を制御する研究を行った。VFとは多孔質媒質内や二枚の平行平板間の薄い隙間であるヘレ・ショウセル内で、高粘性液体が低粘性液体に置換される際、二流体の界面が指状に広がる現象である。二つの溶液・反応系を用いた。一つは、高粘性液体が塩酸を含むグリセリン水溶液、低粘性液体がポリアクリル酸ナトリウム水溶液とポリエチレンオキサイド水溶液と塩化カリウムの混合液体である系である。二つ目は、高粘性液体がカルシウムイオンを含むグリセリン水溶液、低粘性液体がアルギン酸ナトリウム水溶液とした場合である。両者の系で化学反応により、粘弾性物質が生成する。両者の系で反応を伴う場合、VFを抑制することが確認された。しかし、VF抑制能が大きくなる流量が両者の系で異なっていた。VF抑制能は前者の系では高流量で高く、後者の系では低流量で高かった。この結果を、解釈するために、反応界面の大振幅振動せん断流れ(Large Amplitude Oscillatory Shear Flow: LAOS)測定を行った。その結果、前者の系では、せん断速度が大きくなると弾性の影響が大きくなり、後者の系では、せん断速度が小さいとき弾性の影響が大きく、せん断速度が大きくなると弾性の影響が小さくなることがわかった。VFの抑制が弾性に起因していることが、研究代表者らの過去の研究から指摘されている。このことを鑑みると、今回の結果は、弾性が顕著になる流量範囲でVFが抑制され、弾性が顕著になる範囲が溶液・反応系で異なっていたと解釈することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高粘性液体に高粘度のニュートン流体、低粘性液体にポリマー水溶液(非ニュートン流体)を用い、反応粘弾性界面を用いてVFを抑制する研究に関しては、一定の成果を得ることができた。今回の結果は粘弾性界面を伴う流体力学に関して、界面LAOS測定が有用であることを初めて実証した結果になる。今後この結果は論文執筆する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高粘性液体にポリマー水溶液(非ニュートン流体)、低粘性液体にニュートン流体を用いた系について検討する。この系では、過去に二つの系で行っていた。一つ目は高粘性液体にポリアクリル酸ナトリウム水溶液、低粘性液体に鉄3価イオン水溶液を用いた系である。二つ目は高粘性液体にキサンタンガム水溶液、低粘性液体に鉄3価イオン水溶液を用いた系である。前者では低流量でフラクチャーパターンが生じるのに対し、後者では高流量でフラクチャーパターンが生じる。この差異を界面LAOSで解明できるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度、沈殿反応に関する検討が進んでおらず、それに伴う消耗品、旅費を支出しなかった。当該年度はゲル生成反応を伴う系に集中した方がよいと判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度、使用しなかった沈殿反応に関する検討に係る経費は、次年度、その検討のための消耗品購入や、研究打ち合わせおよび成果発表のための旅費、等に充てる。
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