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2016 年度 実施状況報告書

サブミクロン凹凸表面上の微小液滴挙動のモデル化と計算技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K06070
研究機関富山大学

研究代表者

瀬田 剛  富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (50308699)

研究分担者 内山 知実  名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (90193911)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード数値流体力学 / 超撥水 / GPGPU / 格子ボルツマン法
研究実績の概要

超撥水現象を再現するため、飽和フルオロアルキル基等のコーティングによる撥水作用の定式化に界面拡散モデルを用い、固体壁面上の微小突起物表面を埋め込み境界法(Immersed Boundary Method, IBM)により設定した。IBMでは、液滴挙動が解析されるオイラー座標系とは独立に、固体表面上にラグランジアン格子点が設定される。ラグラジアン格子点において設定された濡れ性の影響を受けて運動する液滴の挙動をオイラー座標上で解析可能な計算手法の構築が必要である。この問題に対し、オーダー・パラメータに関する勾配と、化学ポテンシャルに対する勾配とをフラックスに変換することで、異なる格子点間での固体壁の濡れ性による液滴への影響を適切に設定することに成功した。
また、接触角を適切に解析するためには、気液界面を正確に捕捉する必要があるが、界面拡散モデルでは、高ペクレ数に対し数値的不安定性が発生する問題があった。Two Relaxation Time衝突則と、誤差項を除去する補正項とを適用することで、気液界面に発生する界面振動を効果的に除去することに成功した。
計算上、液滴が固体壁内へ浸透しないようにするため、陰解法に基づくIBMを用いた。陰解法を用いた場合、係数行列に対する数値的不安定性の問題から、固体表面上にラグランジュ点を均等かつ適切な距離で設定する必要がある。更に、IBMでは、固体壁内部に仮想的な流体が存在すため、固体壁内部に存在する流体が液滴挙動に影響を及ぼし、濡れ性を適切に再現出来ない可能性がある。ラグランジュ点の設定が不要なSmoothed Profile Methodに対し、外力の計算手法を修正し、新たなプロファイル関数を導入することで、固体壁内への漏れを除去しつつ、曲面を有する構造体に対する濡れ性を、高速に解析できる計算モデルの構築に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

気液界面を解析するオーダー・パラメータの勾配をフラックスに変換することで、曲面を有する固体表面の超撥水現象を、埋め込み境界法(Immersed boundary method)によってかいせきすることに成功した。また、固体表面に対するラグランジュ点の設定が不要なSmoothed profile-methodに同様の手法を適用することで、並列処理に適した計算技術を提案でき、多数の微小突起物が存在するロータス効果に対する高速計算の準備が整った。

今後の研究の推進方策

任意形状の固体壁面に対する接触角の設定が可能な計算手法を提案し、微小突起物の形状による撥水効果への影響を数値解析により検証可能となった。今後、高速度カメラで撮影された超撥水面上の液滴形状に関し、実験結果と数値計算結果とを比較することで、計算手法の有効性を検証し、超撥水表面上の液滴挙動に対する支配パラメータを明らかにする予定である。超撥水表面へ衝突した液滴は複雑に変形し、また、微小液滴形状により液滴挙動が大きく変化するため、本提案計算手法の妥当性を検証するためには、実験と計算とを同時に実施し、十分なデータを得る必要がある。Wenzelの法則やCassie-Baxterの法則、表面粗さと液滴の前進接触角と後退接触角との関係や、超撥水表面への液滴の衝突実験における液滴の跳ね返り速度と、衝突時における液滴の最大半径との関係などについても、比較検証を行い、提案手法の有効性を検証する。また、表面粗さが閾値より大きくなった時、エアポケットが発生し、後退接触角が急激に増大する過程を、数値計算で再現し、実験では計測困難な空気の圧力分布等による撥水作用への影響を検証する。以上により、ロータス効果に代表される超撥水現象を、固体表面の化学的性質のみではなく、流体力学的見地に基づく固気液三相挙動解析技術による解明を目指す。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、平成27年度の見積もり額が183,000円であった数値流体力学可視化ソフト((株)ヒューリンクス)が、平成28年度の購入時には174,420円であったためである。

次年度使用額の使用計画

平成29年度は実験装置を作成するため、高速度カメラ等の購入を予定している。次年度使用額を実験装置に使用することで、有効な予算の執行を行う計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 界面拡散モデルに対する格子ボルツマン法へのTRT衝突則の適用2016

    • 著者名/発表者名
      瀬田剛
    • 雑誌名

      計算数理工学論文集

      巻: 16 ページ: 25-30

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 埋め込み境界-格子ボルツマン法による濡れ性の計算2016

    • 著者名/発表者名
      瀬田剛,内山知実,高野登
    • 学会等名
      日本機械学会 第94期 流体工学部門 講演会
    • 発表場所
      山口大学常盤キャンパス(山口県宇部市常盤台
    • 年月日
      2016-11-12 – 2016-11-13
  • [学会発表] Cahn-Hilliard 方程式に対する格子ボルツマン法の精度評価2016

    • 著者名/発表者名
      瀬田剛,内山知実,高野登
    • 学会等名
      日本機械学会 第29回計算力学講演会
    • 発表場所
      名古屋大学東山キャンパス(愛知県名古屋市千種区)
    • 年月日
      2016-09-22 – 2016-09-24
  • [学会発表] 濡れ性を考慮した埋め込み境界-格子ボルツマン法による液滴挙動解析2016

    • 著者名/発表者名
      瀬田剛
    • 学会等名
      日本混相流学会混相流シンポジウム2016
    • 発表場所
      同志社大学今出川キャンパス(京都府京都市上京区)
    • 年月日
      2016-08-08 – 2016-08-10
  • [備考] 瀬田研究室のホームページ

    • URL

      http://www3.u-toyama.ac.jp/seta/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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