研究課題/領域番号 |
16K06070
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
瀬田 剛 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (50308699)
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研究分担者 |
内山 知実 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (90193911)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 数値流体力学 / 超撥水 / GPGPU / 格子ボルツマン法 |
研究実績の概要 |
昨年度、ラグランジュ点の設定が不要なSmoothed Profile Methodと格子ボルツマン法を用いることで、サブマイクロスケール凹凸面上の液滴挙動の解析が可能な計算モデルの構築に成功した。本計算手法の有効性を検討するため、今年度は、集束イオンビーム加工観察装置(Focused Ion Beam、 FIB)を用いて、精密加工によりシリコン上にサブマイクロスケールの凹凸面を作製し、超撥水現象の再現を試みた。矩形の凸部の一辺の大きさは10μmから0.5μm、ピッチは1μmから0.32μmの3種類の凹凸面を160μm×120μmの範囲のシリコンウェハー上に作成した。凹部の深さは0.5μmである。FIBにより超撥水面を作成したシリコンをステージの上に設置し、噴霧器により微小液滴を落下させた。超撥水面上に落下した液滴の様子を高速度カメラにより観察した。参考文献や理論式に基づき、撥水面として作用するはずの凹凸面を作成したが、シリコン上の水滴は、落下してから静止するまでに、大きく横に広がる様子を示し、撥水性を示すことはなかった。なお、飽和フルオロアルキル基等によるコーティング処理は施していない。凸部間のピッチを小さくし、水滴が凹部に入り込まないCassie状態に対応したサブマイクロ凹凸面を作成したが、撥水性は示されなかった。凸部の表面形状による接触角への影響を数値計算により検証した文献を参考に、凸部の形状を十字型に加工した微細凹凸面を作成したところ、超撥水現象を再現することが出来た。この十字は、縦0.66μm横0.66μmの範囲に対し、四隅から一辺が0.22μmの正方形を取り除いた形状になっている。凸面の表面形状により濡れ性が変化することが示され、次年度予定されている三次元計算による超撥水現象の解明に対する有意義な情報を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、高速度カメラで撮影された液滴形状と数値計算結果とを比較し、計算手法の有効性を検討し、更に、液滴挙動に対する支配パラメータを明らかにする予定であった。飽和フルオロアルキル基等によるコーティングを施さず、Siウェーハ上に作成したサブマイクロスケール凹凸面に対し、凸部が矩形の場合は撥水現象を再現できなかったが、凸部の形状を十字型に変更することで、超撥水現象を再現することが出来た。このことから、ピッチ長に基づく表面粗さだけでなく、凸面の表面形状が、接触角に対し、重要な要素あることを明らかにすることが出来た。次年度予定している三次元計算により超撥水に対する最適な凸面の表面形状を検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実用的な計算時間内に、高精度な三次元計算結果が得られるように、GPGPUによる本計算手法の高速化・並列化を行うと共に、GPGPUへの本計算手法の適用性評価を行う。格子ボルツマン法では、分布関数が独立に運動することで、系全体の流体運動が再現される。分布関数が独立に運動する格子ボルツマン法は並列効率が高く、GPGPUによる並列計算に適している。また、濡れ性を考慮した固体表面形状は、埋め込み境界法、Smoothed Profile Method、Interpolated Bounce back法から、最も計算効率の高い境界条件の設定方法を選び、再現する予定である。本年度得られた知見に基づき、凸部の表面形状による接触角への影響を、数値計算により実証することで、ロータス効果に代表される超撥水現象が、固体表面の化学的性質のみではなく、固体表面近傍の圧力分布等を考慮した流体力学的見地に基づく固気液三相挙動解析技術によって説明可能であることを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)次年度使用額が生じた理由は、予算内で購入可能な高速度カメラでは、サブマイクロスケール上の微小液滴を撮影できないことが判明したため、既存の高速度カメラを用い、高倍率レンズの購入に予算を配分したためである。 (使用計画)翌年度分として請求した助成金では予算が不足していた最新のGPUが、次年度使用額を用いることで購入可能になる。最新のGPUを用いた大規模計算を実施し、有効な予算の執行を行う計画である。
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