研究課題/領域番号 |
16K06072
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
飯尾 昭一郎 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (80377647)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 凸面 / 不安定性 / 渦 / 自由表面 / 水車 |
研究実績の概要 |
本研究では,開放型貫流水車の水流導入に使用している曲面流路に代表される,凸面上を水流が流下する際にその自由表面が波状に変形する機構の解明,さらにその波状変形の抑制により水車性能を向上させるための知見の獲得を目的としている.波状変形は,流れ方向と直交方向に一定間隔で定在的に発生し,流れ方向に筋をなしている.この現象には,落下水流に作用する遠心力と重力,水の表面張力等が関係していると考えられる.また,水が凸面上を流下する際には,重力の作用により加速流となっている.このように,変形機構には多くのパラメータが影響している可能性があり,渦形成に直接的に関わる条件の抽出に取り組んでいる.その中で,平成28年度の研究において,水中で回転する円筒外周表面において,円筒の回転角加速度の減少時に周方向に伸びる渦構造が形成し,その渦構造が回転軸方向に一定間隔で存在することを明らかにしている.これは,凸状の固体壁面近傍に発生する不安定性がせん断応力の作用により減速されることが直接的な原因であることを示唆していると考え,平成29年度は凸状曲面流路と水流との間に作用するせん断応力の大きさと定在波の発生状況との関係評価に努めた.具体的な方法として,開放型貫流水車の水流導入に使用している曲面流路を対象として,その流路表面に流れ方向に移動する不織布のシートを設けた.このシートは上流,下流いずれの方向にも移動することができ,移動速度を変化可能とした.水は曲面流路表面のシートに沿って流下するため,シートの移動により固体壁面と水流との間に作用するせん断応力を変化させることが可能である.流れ場はハイスピードカメラによって直接的に観察,評価した.その結果,水流自由表面に発生する定在波の大きさについてはシートの移動速度により明確な変化があることが確認された.一方で,定在波の間隔については大きな変化は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
凸面上を流下する自由表面を有する流れに生じる不安定性に対して,その発生因子として考えられる遠心力および固体壁面と流体との間に作用するせん断応力の影響のみを評価するために,平成28年度から継続して重力,表面張力が無視できる水槽中での回転円筒表面に発生する不安定性の解明をおこなった.その結果,せん断応力の影響が重要な因子の一つであることを明らかにし,当初の目的である凸面上を流下する水流表面の波状変形の発生因子の一つにせん断応力による壁面での水流の減速作用があることが示唆された.そのため,凸面を有する曲面流路の壁面と水流との間に作用するせん断応力を変化させ,そのときの自由表面に発生する定在波の状態を観察し,せん断応力の状況が定在波の発生に影響することを定性的ではあるが実験的に見出すことができた.以上のことから,当初の予定どおり研究は進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
凸面状を流下する自由表面を有する流れに生じる不安定性に対して,その発生因子を定量的に評価し,定式化することが求められる.実験的にせん断応力や遠心力を評価することは非常に難しいため,数値流体力学を利用したシミュレーションにより対象とする現象を評価していくことで,効率的に研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:平成29年度は,平成28年度から継続して物理的因子を制限した回転凸面に生じる不安定波の発生機構の本質把握に努めた.その結果,実験装置の機構を変更したことで,次年度使用額が生じた. 使用計画:平成30年度請求額と合わせて追加実験に要する費用およびシミュレーションにかかる費用に充当することで研究の効率的な進捗を図る.
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