本研究では,凸面上を流下する自由表面流れに発生する定在波を対象に,その発生形態の整理と発生機構の解明,および波状変形の抑制方法に関する知見の獲得を目指した.水車に流入する水流に波状変形が発生すると,水流が水車ランナに作用する位置が最適位置から外れる.そのため,波状変形の抑制は水車性能向上の観点から重要である.この波状変形は,流れ方向と直交方向に一定間隔で定在的に発生し,流れ方向に筋をなす.凸面上を流下する水流は曲面部において流れ方向を水平から鉛直方向へと変え,重力の作用により加速流れとなる.落下水流には流路壁面との間にせん断力が作用し,その他に遠心力,重力,水の表面張力等が関係すると考えられる.多くのパラメータの影響が考えられるこの現象において支配的なパラメータの抽出に取り組んだ.重力の作用を無視すべく水中で加速回転させた円筒外周表面の流れ場について,色素を円筒表面に塗布した可視化方法により,回転方向に回転軸を有する渦が,円筒の回転軸方向に一定間隔で形成されることが観察された.この渦構造は回転円筒の減速時に見られ,加速時には見られなかった.この事実から,壁面に沿う流れが壁面との間に作用するせん断力により減速されることが定在波の発生に影響することが示唆された.平成30年度は,CFD(数値流体力学)解析により,コンピュータ上での現象の再現と解明に注力した.自由表面流れをVOF法により計算し,計算格子や乱流モデルについても検討した.しかしながら,自由表面における定在波の発生は再現できなかった.その原因として,計算負荷と計算コストの観点から格子数に現実的な上限があり現象の分解能が不足していたこと,および計算モデルにおいては現実に存在する自由表面周囲の気流の影響までを考慮するに至らなかったことを考えている.空気と水流との相互作用まで含んだ更なる検討を実施する必要がある.
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