研究課題/領域番号 |
16K06075
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
土田 陽一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30144190)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遠心分級 / 湿式分級 / 三産物分級 / 準剛体回転流 / 内部流 / 軸対称流 / スチュワートソン層 / エクマン層 |
研究実績の概要 |
微粉体の新しい粒度分級方式(粒度により分離)として、これまでに完全な層流の高遠心力場(回転をいくら高速にしても乱れが発生しない準剛体回転流)を用いる新方式を提案し、従来の最高精度で分級できる少処理量向きの二産物分級機(原料粉体を粗粉と微粉の二産物に分離)を開発した。本研究は、この方式の発展形であるシームレス多産物分級機としての三産物分級機(原料粉体を粗粉、中間粉、微粉の三産物に分離)と四産物分級機(原料粉体を粗粉、粗大側中間粉、微細側中間粉、微粉の四産物に分離)の高精度化法を確立することを最終目的とする。平成28年度は、シームレス三産物分級機において面対称形状の分級機に取りかかる前に、面対称形状の半分(ただし対称面は壁とする)からなる単純形状の分級機について研究した結果、以下の主な知見を得た。 1.シームレス二産物分級機において、微粉産物(分級中に捕集できる)はそのままにして、粗粉産物を、分級中に捕集できる中間粉産物と、分級中は分級機壁面に付着するため捕集できないが分級終了後にバッチ捕集できる粗粉産物に分けることによって三産物分級化したときの分級性能を流れおよび粒子運動の数値解析並びに分級実験を行って評価した結果、分級条件によっては三産物分級化が有効である(産物の粒径範囲が小、中、大粒径に分かれて三産物とも分級製品となる)ことを明らかにした。 2.上記1のバッチ捕集による中間粉産物を、新たに捕集部を設けて分級中に捕集できるように変更した連続式の分級機について数値解析による性能評価を行った結果、連続式三産物分級化は有効であり、中間粉産物の粒径の均一度は上記1の分級機よりも向上する場合があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度の当初の研究実施計画では面対称形状と単純形状の両形状のシームレス三産物分級機の高精度化法の確立に着手することになっていたが、複雑な面対称形状の三産物分級機の前に単純形状の三産物分級機の高精度化法の確立に着手した。最初にその準備段階として、このプロトタイプにあたるシームレス二産物分級機の性能をこれまでよりも深く把握するために分級実験を行って評価したところ、分級前後の粉体粒子量にかなりの相違が認められ(分級前後の質量収支が合わない)、実験結果の測定精度に問題があることが分かった。 そこで測定精度を改善したところ、前述の分級前後の相違をかなり減少させることができた。そしてこの改善過程で、シームレス二産物分級機において、微粉産物(分級中に捕集できる)はそのままにして、粗粉産物を、分級中に捕集できる中間粉産物と、分級中は分級機壁面に付着するため捕集できないが分級後にバッチ捕集できる粗粉産物に分けることによって、三産物分級化が可能ではないかということに気付いた。そこで前述のようにこれに焦点をあてた分級実験と数値解析を行って、三産物分級化が可能であることを明らかにした。 さらに、前述のように上記のバッチ捕集による中間粉産物を、新たに捕集部を設けて分級中に捕集できるように変更した連続式の分級機について数値解析による性能評価を行って、連続式三産物分級化が可能であることを明らかにした。 以上のように予期していなかったことが起こったため、面対称形状のシームレス三産物分級機の高精度化法の確立に着手することができないなど当初の研究実施計画は未達成であり、現在までの進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように予期していなかったことが起こったため、当初予定の面対称形状のシームレス三産物分級機の高精度化法の確立の着手は後回しにして、まずは前述のように有効性が明らかとなった単純形状のシームレス三産物分級機の高精度化法の確立に焦点を絞って、平成29年度は以下のように研究を遂行する。 1.最初に流れと粒子運動の数値解析を行って、より高精度の分級性能が得られる分級条件設定法を解明する。すなわち、分級性能の支配パラメータ(遠心効果パラメータ、エクマン数、流量配分等)を変化させた場合の支配パラメータと分級性能(各分級産物の粒径の平均径と変動係数[小さいほど均一度良好]、収率[大きいほど処理量大]等)の関係を考察し、高精度が得られる分級条件設定法を明らかにする。 2.上記1の数値解析結果を検証するため、分級実験を行う。なおこれまでの研究により、数値解析結果は実験結果と定性的に一致することが確かめられている。 3.上記の1と2の結果を考察するとともにさらなる高精度化法について検討し、高精度化法が確立させるまで1と2を繰り返す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように予期していなかったことが起こったため、面対称形状のシームレス三産物分級機の高精度化法の確立に着手することができないなど、当初の研究実施計画は未達成で現在までの進捗状況が遅れている。それゆえに、当初の使用予定額の大半を占める分級装置の改造費用が未使用となったからである
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展により分級装置の改造内容が絞られ次第、その改造費用として使用予定である。
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