研究課題/領域番号 |
16K06076
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
柳田 秀記 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90166554)
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研究分担者 |
西川原 理仁 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50757367)
宮北 健 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (00748121)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気流体力学 / EHDポンプ / 電荷注入 / 解離 / イオンドラッグポンプ / コンダクションポンプ |
研究実績の概要 |
平成28年度は(1)EHD ポンプ特性の計測(液体の種類と液温の影響),(2)ポンピングメカニズムの解明,(3)冷却性能実験,(4)EHD ポンプの耐久試験の4項目を並行して実施する計画であった. 試作したEHDポンプを組み込んだ冷却実験回路を構成し,先ずはEHDポンプの基本特性の計測を試みた.また,H29年度に計画していたポンプの多段化および並列化についても一部先行試作して,性能評価を行った.数値解析との比較を行うことを意図して,流路高さ1 mmの内部に組込む小型のポンプを製作したため,精度の良いポンプの製作に時間を要したこと,および,微小な流量計測を行う計測器の試作に時間を要し,液体の温度を変えた実験などポンプ特性の詳細を明らかにすることまではできなかった.冷却性能実験と耐久試験も予備実験程度しか行うことができなかった. しかしながら,ポンピングメカニズムの解明に関しては大きな成果が得られた.EHDポンプは液体中の余剰電荷に作用するクーロン力を駆動力とするが,余剰電荷生成メカニズムには電荷注入現象と解離・再結合の非平衡現象の二つがある.従来これらの電荷生成メカニズムの両方を考慮した研究はごくわずかしか行われておらず,両メカニズムにより生成されたそれぞれの電荷の影響が不明であった.H28年度に両メカニズムにより生成される電荷を考慮できる数値解析用プログラムを作成し,いくつかの電極形状を対象として二つのメカニズムによる電荷の影響を調べた.その結果,電荷注入現象と解離・再結合の非平衡現象がともに生じる場合には,各電荷生成現象が単独で生じる場合に比べて大きな圧力が発生すること,ならびに,その圧力上昇の程度は電極形状に大きく依存することを示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EHDポンプの製作と計測設備の構築に長時間を要し,H28年度に計画した研究項目の内,冷却性能実験と耐久試験についてはあまりできず,その点に関しては当初の予定よりは遅れている.基本的な実験設備はほぼ完成しており,冷却性能実験や耐久試験はH29年度中には十分できる目途が立っている.ポンピングメカニズムの解明に関しては新たな知見を得ることができ,予期していなかった興味深い結果が得られ,この点については大きな進歩であると受け止めている.進行の遅れている研究項目がある一方で大きく進んだ項目もあり,全体としてはやや遅れていると自己評価し,進行速度を上げる原動力としたい.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は引き続き(1)EHD ポンプ特性の計測(液体の種類と液温の影響),(2)ポンピングメカニズムの解明,(3)冷却性能実験,(4)EHD ポンプの耐久試験の4項目を並行して実施することに加え,新たに(5)ポンプの多段化・並列化による大容量化について検討することを申請時に計画している. 電極1対のポンプ(1段ポンプ)の特性を液体の種類や温度を変えて明確にすることが基本であり,実験に関してはH29年度の前半はこの研究項目,すなわち(1)の項目に重きを置く. 電荷注入現象と解離・再結合の非平衡現象の両現象が生じる液体では,各現象が単独で生じる場合よりも発生圧力が非常に大きくなることがH28年度の研究で明らかとなり,この特性について電極形状や液体の特性を変えて数値解析によりさらに調べ,より性能の良い電極形状を追及するとともに,ポンピングメカニズム(項目(2))を詳細に調べる. 項目(3),(4),(5)の冷却性能実験,耐久試験,および,多段化・並列化の実験は,当初の研究計画を修正して,H29年度の後半に重きを置いて実施する.多段化に関しては実験研究の前に数値解析による予備検討を行い,検討結果に基づいて最良と思われる電極や流路の構成を見出し,その結果を実際の多段ポンプの製作に反映させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
EHDポンプの製作に時間を要したことにより,液体の種類を変えてポンプ特性を測定することと耐久試験の実施がH28年度中にはできなかった.そのため,試験液体の購入量が当初予定より少なく,また,耐久試験用の比較的安価な高電圧電源を購入するに至らず,物品購入額の総額が減少したことが理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
約20万円の研究費をH29年度に持ち越すこととなったが,H29年度はいくつかの液体を用いて異なる温度でポンプ特性を測定することと耐久試験を実施するため,試験液体の使用量が多くなり,また,耐久試験専用の比較的安価な高電圧電源が必要となる.また,成果報告のための旅費も多く必要となるため,持ち越した研究費を含めてH29年度はそれらの購入や旅費に使用する.
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