研究実績の概要 |
通常流動層分野では,粒子群に働く流体力が重力と平均的に釣り合う流動化状態を主な研究対象としているが,本年度は,Oshitani et al. (Phys. Rev. Lett.,116,068001, 2016)に倣い,吹き込むガス流速が最小流動化速度より若干小さく,重力が流体力に勝る条件において,粗大粒子の浮沈現象に着目し研究を行った.このような条件においては,粗大粒子の密度に応じて,特異的な沈降挙動となることが報告されている.特に,粗大粒子の密度が周囲の媒体粒子の見掛け密度に近いと,粗大粒子近傍で気泡発生を伴う局所流動化が起こり,粗大粒子が層内に低速で深く沈降することが報告されているが,その物理機構についてはこれまでよく解っていなかった.本年度は,昨年までに開発を行った大規模離散粒子シミュレーションと人工球形カプセル粒子を用いた高速MRI計測を用いて,現象の再現と沈降メカニズムについて詳細な検討を行った. 計算,高速MRI計測のいずれにおいても,気泡発生を伴う粗大粒子近傍での局所流動化現象を確認し,さらに粗大粒子密度に応じた特異的な沈降についても確認することができた.高速MRIを用いることにより,従来困難であった粒子層内部における粗大粒子の沈降挙動と近傍粒子群の流動を,リアルタイムかつ非接触に観察することに成功した.計算においては,粗大粒子に発生する作用力を,周囲の流体・粒子群・重力による寄与に分解し,沈降過程の詳細を検討した.特異沈降する場合は,粗大粒子近傍から気泡の離脱が起こる際,層中に発生している鉛直方向のガス圧力勾配が局所的に緩和され,流体力により粗大球を支えきれなくなることにより沈降が起こっていることが明らかとなった. 定量的には,計算・高速MRI実験間で依然差が認められるため,引き続き検討を行う予定である.
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