研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,粒子群に働く重力が流体力に勝る条件において発生する粗大粒子の特異沈降現象(Oshitani et al.,Phys. Rev. Lett., 116, 068001, 2016)を対象とし,高速MRI計測と離散粒子数値シミュレーションによるメカニズムの詳細解明を試みた.特に,粗大粒子密度が媒体粒子の見掛け密度に近い条件では,粗大粒子近傍で気泡発生を伴う局所流動化が起こり,粗大粒子が低速で沈降しその後深い位置で停止することが報告されているが,その物理機構についてはよく解っていなかった.本年度は,まず数値シミュレーションにより各種パラメータへの依存性について検討を行い,本現象が粒子層の初期空隙率,粒子間の摩擦係数,空塔速度に対して極めて敏感であることを確認した.特に初期空隙率については,39.6%から40.3%とたった0.7%変化させただけで,沈降挙動が大きく変化することを示した.低速での沈降に加えて,層中での粗大粒子の停止挙動も大変興味深く,本年度はこの点について検討を行った.昨年度の検討の結果,低速沈降は粗大粒子近傍から気泡の離脱が起こる際,鉛直方向のガス圧力勾配が局所的に緩和され,粗大粒子の自重を流体力が支えきれなくなるためであることを明らかにした.層内においては,静水圧に相当する粉体圧がわずかながらも依然存在している.また粒子層を初期において十分緩くパッキングしているが,粗大粒子の沈降進展と共に,その前方に粒子層の圧密領域が形成されることを,計算結果から確認した.両者は共に,粗大粒子表面からの気泡離脱と,その結果起こる局所的なガス圧力勾配の緩和を抑制し,これらの結果,最終的に粗大粒子は層中において停止に至ることを明らかにした.
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