弱電導性の2枚の平行平板シース間を,スリットノズルより噴出した平面液体ジェットが流れるとき,流れの方向に平行な静電場がジェットの安定性と薄膜形成に与える影響を非線形現象まで含めて解析的に調べている.特に,粘性率や表面張力などの流体パラメータと,電気伝導率や誘電率などの電気パラメータの影響がジェットの形状に対してどのように現れるかを明らかにする.昨年度までに,外部電場が強くなるかまたはジェット流体の電気伝導率が大きくなるとジェット先端部が急激に加速され薄くなることが示された.さらに,ジェット流体と周囲流体の電気伝導率や誘電率の比がジェット先端部に及ぼす影響を調べ,電気伝導率比と誘電率比の積がある値を超えると先端部形状の特性が急激に変化することを示した. このような現象は,外部電場を強くする代わりに電導性シースをジェット表面に近づけることにより同様に現れるが,そのとき,シース壁面とジェット表面での空力不安定による影響が顕著になってくることが予想される.そこで,今年度は電場の影響がない場合,ジェットの流速(ウェバー数)が大きくなるに従いジェットの変形にどのような影響が現れるかを非線形解析により調べた. 平面ジェットの不安定性はすべて空力不安定によることが知られているが,ウェバー数が大きくなると,シース面がジェット壁面に近ければ界面にカスプに近い形状が現れることがわかった.これは,平面ジェットにおける空力不安定による破断の一つの特徴であると考えられる.このカスプ形状は,周囲流体との密度比に大きく影響をうける.密度比が大きければ(周囲流体密度がジェット流体密度に近い場合)ロールアップ現象が起こることがこれまで知られているが,本解析のように周囲流体密度が小さければ,ロールアップはおこらず,カスプ先端部が大きく成長し,成長の時間的な増加は対数的であることがわかった.
|