平成30年度は昨年度までの実験を継続するとともに、従来使用していたTriton X-100のみならず分子量が異なるTriton X-141に関しても実験を実施した。その結果、吸着脱着に伴う球形液滴界面への界面活性剤のモル流束に及ぼす分子量の影響は小さく、Triton X-141の場合もTriton X-100と同様に流動が無くなった液滴界面には従来用いられてきたFrumkin-Levichモデルが適用できるものの、流動する液滴界面には同モデルが適用できず、Generalized Frumkinモデルなどを用いる必要があることを明らかにした。ただし、Generalized Frumkinモデルに含まれる定数の決定には実験が必要であるため、普遍的なモデル構築のためには、さらなる実験が必要である。ただし、数値予測手法の枠組みに関しては、大きな問題はないと考えられる。また、SFVを用いて計測した速度分布から圧力を評価する手法を改良し、評価精度を高めた。また、界面における評価圧力および速度分布から算出した粘性応力から液滴に作用する局所流体力の分布およびその総和である流体力の評価を実現した。その結果、界面活性剤の吸着に伴い液滴の後端から界面垂直方向の粘性応力が低下し、せん断応力が増加するとともに圧力も増加すること、これらの力のうちせん断応力の変化量が最も大きく、界面の汚染に伴う抗力の増加は主に剪断応力によることを実験的に再確認した。以上のように、本研究は、従来困難であった流動界面における界面活性剤の吸着・脱離特性を実験的に評価できる手法を提案・検証するとともに、従来使用されてきた静的な吸着・脱着モデルが流動界面に適用できない条件があることを実証した。今後、本手法を用いることによりさらなる吸着・脱離現象の解明が期待できる。
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