研究課題/領域番号 |
16K06084
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
一宮 昌司 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (50193454)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 複雑さ / コルモゴロフ複雑度 / 正規化圧縮距離 / 乱流遷移 / 混合層 |
研究実績の概要 |
コルモゴロフ複雑度の基礎的研究を完成させ、さらに新しい流体混合、拡散測度への応用研究を目指すために、静止流体中に噴出された噴流直後に形成される混合層の乱流遷移過程の速度信号を測定して、これにコルモゴロフ複雑度解析を行った。 計測器具には、熱線風速計とX型熱線プローブを用い、流れ方向及び垂直方向の速度成分を、さまざまな下流位置と垂直において得た。また圧力変動も測定した。 次に、熱線風速計にて取得した速度データをA/D変換してwindowsパソコンに取り込み、この速度の時系列データをパソコンで7z形式で圧縮し近似コルモゴロフ複雑度AKと正規化圧縮距離NCDを求めた。これより以下の項目が明らかになった。 1.時間差のある同じデータの一部分間では、大きな時間差であってもまだ2データがかなり重複する間はNCDはほぼ0であるが、ここから時間差が増えるとデータ重複部が情報距離NCDに敏感に反映する。 2.一定な基準速度ではなくて変動速度の振幅で正規化した変動速度の複雑さは、振幅の影響を受けない純粋な複雑さを示す。 3.同じ位置における流れ方向と垂直方向の変動速度間の複雑さを求めて、相関やカルバック・ライブラーのダイバージェンスなどと比較した結果、これらとはまったく異なる指標となり得ることがわかった。 4.変動速度の2成分間の値の差異が生じると共に,両成分間の時間変化の複雑さにも差異が生じる。 以上の成果を、第20回オーストララシアン流体力学会議及び日本流体力学会年会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
混合層の乱流遷移過程の速度測定実験は順調に進行し、複雑度解析を行なうことができた。 時間差のある同じデータの一部分間に複雑度解析を行ない、データの重複度と複雑度の関連を明らかにできた。 変動速度の正規化に振幅を用いることの有用性を明らかにできた。 同じ位置における異なる速度成分間の複雑度の有用性を明らかにできた。 以上の成果を、第20回オーストララシアン流体力学会議及び日本流体力学会年会で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
乱流遷移過程における複雑度のさらなる特性を明らかにするために、平板乱流境界層の再層流化過程において複雑度解析を行う。また渦度を測定する。 2値(0または1)信号時系列データを用いて、複雑度解析を行う。データとしては、等速度点集合、 乱流/層流の定義関数、組織構造定義関数などの利用を検討する。 以上の結果を日本機械学会や日本流体力学会などで発表し、論文を執筆して投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
渦度を測定するために熱線風速計を2台購入することを計画していたが、まず速度測定を優先する方が、研究進行上有益であることが明らかになったために、熱線風速計は本年度は1台しか購入しなかった。その代わりに次年度に修理することを当初計画していた微差圧計を本年度に修理して、次年度に計画していた圧力変動を測定することができて成果を得た。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額690,942円は、次年度に交付される額と合わせて熱線風速計の2台目を購入して、渦度を測定する予定であり、結果的に計画の遅れは生じない。
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