研究課題/領域番号 |
16K06088
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
坂口 大作 長崎大学, 工学研究科, 教授 (70244035)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多目的最適化 / 数値流体力学 / 遠心圧縮機 / 小弦節比翼列ディフューザ |
研究実績の概要 |
近年の流体機械における設計要件は,設計点における効率のみならず非設計点における安定した運転が求められるようになってきた.従来の設計手法は,剥離を抑制し損失を減らすことに重点が置かれており,非設計点では流れが剥離してサージなどの自励的不安定現象を生じてしまう.本研究では,流れが剥離しても流れ場自身が自動的に自己修復して安定した流れ場を実現する機能を有する形状を探索する.探索システムとして,数値流体解析を効率的に行うことができる多目的最適化設計手法を用い,遺伝的アルゴリズムによる全方位的形状探索とし,さらにメタモデルとしてニューラルネットワークを適用することで効率的な形状探索を行う. 自動車用ターボチャージャーでは,運転回転数および作動運転流量の範囲が広く,作動流体がディフューザに流入する角度も大きく変化するので,一般的に羽根なしディフューザが採用される.羽根なしディフューザよりも高い圧力回復率を得るためには,チャンネルディフューザもしくは翼型を用いた羽根つきディフューザを用いる必要があるが,ディフューザに流入する角度が大きく変化する場合には適用が難しい.しかし,羽根つきディフューザの中でも,弦節比が1.0以下程度である小弦節比翼列ディフューザは,低流量側では側壁に生じる二次流れ効果によって失速が抑制され,広い作動流量範囲を持つ.しかし,低流量域で失速を抑制する二次流れをうまく作動させるための知見が少なく,二次流れに着目した設計手段も確立されていない. そこで本年度は小弦節比翼列ディフューザの最適化を実施した.特にシュラウド先端隙間を設けることで二次流れ効果が活性化することを見出し,ディフューザの流れ角が大きく変化する場合でも,失速することなく翼型ディフューザが適用できることを明らかにする.さらに,設計パラメータの感度解析を行い,ディフューザ設計の指針を提案する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過給機用遠心圧縮機において,小弦節比翼列ディフューザの適用可能性を追究した.遺伝的アルゴリズムおよびニューラルネットワークを用いた全方位探索システムである多目的最適化を適用し,数値解析により最適形状を求めるシステムを構築した.最適化結果は,ディフューザ流入角が 15 deg. ~ 43 deg. と大きく変化する運転領域でも,失速しない翼列ディフューザが見出され,ディフューザ先端隙間を通路幅の約10%設けると二次流れ効果が得やすくなり,最適形状を見出しやすくなる.また,実験限界流量より50%減じた流量でも,二次流れ効果により失速することなく,安定した流れ場を実現できる可能性があることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
ターボチャージャー用遠心圧縮機は,インデューサおよびディフューザそれぞれに対して失速抑制対策が必要である.研究初年度には,インデューサ失速対策として循環流型ケーシングトリートメントを適用し,最適形状を見出した.また,本年度はディフューザ失速対策として小弦節比翼列ディフューザを適用し,最適形状を提案した.両者は配置場所が異なるが,非設計点における低エネルギ流体を主流へと戻すことにより自己修復的に流れ場を改善しようとする考えに基づいており,多目的最適化による形状探索システムにより初めて設計できるものである.今後は,両者を組み合わせた形状を考慮し,相互作用に基づく自己修復機能の活性化が期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究での成果の一部が企業との共同研究へ発展し,予定していた研究経費の一部を企業との共同研究経費により賄ったため.次年度使用額分は,研究計画を拡大し,解析精度高度化のための解析環境整備のために使用する.
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