静止している円板に自転および公転運動を付加し,円板に付着した液滴の流動臨界条件に関して,溶液の種類を変えて,液滴の体積,回転角加速度の影響について調査を試みた結果,実験の再現性を得る上で,円板の表面性状,温度や湿度環境,液滴の設置形状の影響だけでなく,溶液の種類によっては液表面の水分蒸発による影響が大きいことが判明し,そのばらつきが小さくなる条件で実験を実施した。 その条件下で,直径300 mm(=2R )の円板上にシリコンウェハを貼り付け,サーボモータ制御装置を用いて円板に付加する運動を制御する。液滴が付着した円板に起動回転加速を与え,液の流動の様子を上方に設置した高速度カメラを用いて撮影し,液滴が動き出す回転加速度,液が動き出す際の半径方向外側の前進接触角および半径方向内側の後退接触角を求めて流動臨界条件について調査した。その結果,円板の回転角加速度が大きく,液滴の粘度が高くて液滴の体積が小さいほど,動き出しに必要な加速度が大きくなっていることを明らかにした。 さらに,前進接触角と後退接触角の差が回転加速中にどのように変化するか(時間履歴)について,液体積と角加速度を変えて調査した結果,同一種類の液体であれば,液体積による依存性はみられないが,回転角速度が大きいほど前進接触角と交代接触角の差は高速回転域でも小さいことを示した。これは,回転角速度が液滴の半径方向の変形に大きく影響を与え,その角加速度が大きいほど液滴の変形はしにくいため,動き出しの加速度が大きくなっているといえる。 また,感圧塗料により回転円板上の圧力分布を高精度に計測するための基礎研究を行い,変調光を寿命法に利用した感圧塗料による物体表面の圧力計測に成功した。
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