研究課題/領域番号 |
16K06096
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
亀田 孝嗣 近畿大学, 工学部, 准教授 (70304491)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 二次元チャネル流 / 粗面 / 乱流 / せん断流 / 壁面抵抗 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,十分発達した2次元粗面チャネル流の局所壁面摩擦抵抗係数Cfの評価とPIV計測の予備実験として簡易に製作した流路内の断面平均速度分布の計測を実施した. Cf値の評価は,最初に滑面平板にて十分発達したチャネル流で実施された.測定はチャネル高さに基づくレイノルズ数Rehが2500~8500の範囲において行われ,計測値がDeanの抵抗側に対して5%以内で一致することを確認した.その後,粗さ要素(矩形断面(3mm×3mm)の角棒)をチャネル上下壁面に粗さピッチ比PRが2,4および8で配置した.測定はRehが2500~6500の範囲で実施された.3条件のPR値において,Cf値はReh数の増加に伴い滑面の結果と同様に減少した.また,PR値に対するCf値の増加率はPR=3付近で最も大きくなることが分かった. PIVによる予備実験は,簡易チャンル風洞を製作(測定部寸法は長さ500mm,幅300mmおよび高さ20mmを有する.) して実施された.測定部の一部 (長さ100mm) は透明アクリル板で製作された.購入したPIV計測システムではチャネル断面平均速度が0.69m/s~2.06m/sの範囲で良好に粒子画像を取得することが可能であった.粒子画像からソフトウエアで計算された流れ方向平均速度の妥当性は断面内平均速度分布から算出した流量とオリフィス流量計で設定した流量を比較してなされ,両者は良好に一致した.また,簡易風洞測定部片壁面に粗さ要素を設置し,粗さ要素周りの流れについて計測を実施した.アクリル製粗さ要素の表面で生じる鏡面反射を抑制することで良好な粒子画像の取得が可能であった.また,粒子画像をもとに粗さ要素間溝部内の速度ベクトルを算出して流動パターンを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の実施計画では,(1)十分発達した二次元粗面チャネル流の抵抗係数の評価,(2)レーザーシート入射方法の検討およびPIV予備計測を実施することであった. (1)については,滑面平板にて十分発達したチャネル流で壁面静圧から局所壁面摩擦抵抗係数Cfを算出し,Deanが提案した抵抗側と良好に一致することを確認した.さらに,チャネル上下壁面に矩形粗さ要素を粗さピッチ比2,4および8でチャネル高さに基づくレイノルズ数が2500~6500の範囲でCfの計測を行った.その結果,PR=3付近でCf値の増加率が最も大きくなった. (2)については,簡易チャネル風洞を製作して実施した.レーザーシートの透過性を高めるために,透明アクリル板で測定部ならびに矩形粗さ要素を製作した.粗さ要素近傍では,アクリル製粗さ要素表面で生じる鏡面反射の影響によって粗さ要素近傍において適切な粒子画像が取得できなかった.そこで,アクリル製粗さ要素表面をサンドペーパーで擦ることで鏡面反射を抑制する対策を行い,粗さ要素近傍においても良好な粒子画像が得ることができた.PIV予備計測においては,滑面平板で流路断面内の流れ方向平均速度の測定を実施した.PIVで得られた流れ平均速度分布を積分して得られた流量をオリフィス流量計で設定した流量と比較したところ,両者は良好に一致した.これにより,PIVによる流路内速度の計測が適切に行えることが確認された. 以上を勘案して,"区分(2)おおむね順調に進展している."と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,粗さピッチ比PRが2,4および8について粗さ要素に作用する圧力抵抗の評価と断面内平均速度およびレイノルズ応力分布の計測を実施する. 圧力抵抗の評価には,すでに準備済である真鍮製の粗さ要素(3mm×3mmの矩形断面)の側壁面に壁面圧力孔を約0.3mm程度の間隔で設けたものを使用する.十分発達した領域にこの粗さ要素を設置するために,チャネル壁面を加工する.粗さ要素側壁面の圧力分布を積分して圧力抵抗を算出し,H28年度に計測された局所壁面摩擦抵抗係数に対する圧力抵抗数の寄与率を求め,粗さピッチ比に対する寄与率の変化を明らかにする. 断面内平均速度およびレイノルズ応力分布の計測については,壁面に設けた粗さ要素が障害となって流路内へのレーザーシートの入射が困難となることが予想される.その対策として,粗さ要素の一部を切り取って粗さ要素がレーザーシートの入射を阻害しないようにする.なお,粗さ要素の一部を切除することの影響が流れ場に対して小さいことを局所壁面抵抗係数の計測から確認する.以上の対策を講じた後,断面内平均速度およびレイノルズ応力の測定をPIVにより実施する.相対粗度(チャネル高さに対する粗さ要素高さの比)が大きい(k/h=0.2)ため,粗さ要素に相対的な流れ方向位置の差による断面内の分布の変化が大きいことが予想される.そこで,相対的位置の差を除去するため,粗さ要素一ピッチの範囲で空間平均化処理した分布を求め,粗さピッチ比に対する断面内分布の変化を明らかにする.
|