H30年度は十分発達した二次元粗面チャネル流の壁面抵抗係数に対する粗さピッチ比PRに対する影響を調査するために,チャネル断面内のせん断応力分布,粗さ底層内のせん断応力ならびに第二不変量の分布の評価を行った. せん断応力分布は,粗さ要素一ピッチ当たりの空間平均量として算出した.その際,せん断応力分布はレイノルズせん断応力(Reynolds shear stress),粘性応力(Viscous stress),分散性応力(Dispersive stress)の和として与えた.断面内のせん断応力分布を直線近似して得られたチャネル上壁面および下壁面高さ位置におけるせん断応力値から,壁面抵抗係数のPR値による増加は,粗さ要素を付加した下壁面側のせん断応力値の増加によることを確認した.粗さ底層内のせん断応力分布から,下壁面側のせん断応力値の増加は主としてレイノルズせん断応力によることが明らかにされた.PRによるレイノルズせん断応力値の増加は,粗さ要素間溝部と溝部上方流体の混合が粗さ要素から生じるはく離せん断層が発達することで強化されたためである. つぎに,壁面抵抗係数のPR依存性に対して,第二不変量の立場から明らかにすることを試みた.二次元流の平均速度勾配テンソルの第二不変量Qに着目すると,溝部上流領域では粗さピッチ比による差は小さいが,溝部下流領域の粗さ要素側面近傍断面で粗さピッチ比による差が顕著となる.下流側粗さ要素近傍断面において,Q値はPR値によらず負値であるが,PR値の増加に伴いその絶対値は増加する.これは,溝部上流側粗さ要素から生じたはく離せん断層が下流側粗さ要素に衝突することで,流れ方向平均速度の流れ方向微分値が増加したことによる.なお,下流側粗さ要素近傍断面を除く溝部下流領域においてPR=4でQ>0の傾向が著しく,粗さ要素間溝部により強い平均渦度場が形成される.
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