研究課題/領域番号 |
16K06099
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
加藤 学 津山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20370017)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粒子懸濁液 / フローフォーカッシング / 流れの可視化 |
研究実績の概要 |
繊維強化プラスチックのさらなる高機能化には流動中の繊維運動の把握が不可欠である.しかし,粒子分散濃度が高い濃厚系では,流れの中の粒子を直接観察する際,観察する側の流路壁面近傍の粒子は観察可能であるが,流路中央では手前側の粒子の陰になって観察が困難となる.そこで,濃厚系粒子懸濁液における流動中の粒子運動を直接観察する技術の開発を行う.これまでに開発した薄いフィルム状の流れ場を作り出すフローフォーカッシングの技術を用いて粒子懸濁液をフィルム状流れ場として粒子の運動を観察する技術を開発した. 本年度では,この手法を二種類の希薄系粒子懸濁液に適用し,流路中央を流れる粒子の運動をマイクロスコープで観測した.得られた動画から粒子の速度分布および回転角速度分布を計測した.測定には,球形状の粒子として直径50 μm(日本カノマックス社製),繊維状の粒子として直径10 μm×繊維長0.4 mm(新ニッセン製)をそれぞれ用いた.分散媒は水道水とし,分散比率は重量比で球形粒子では200:1,繊維粒子で20:1とした. 実験結果より,粒子の移動速度および回転角速度の時間的変化を動画から計測可能であることを示した.また,壁面近傍においては粒子の接触が観測され,本手法で粒子同士の接触を伴う条件下での計測も可能であることを示した.粒子が球状かつ粒子同士の接触の影響がない場合には粒子の回転速度はせん断速度に一致するが,繊維状粒子では回転速度の位置による分布は,実測値と予測値は定量的にも定性的にも一致しないことを確認した.粒子同士の接触の他にも,壁面の影響によって回転運動が阻害されること,粒子が流れ方向に配向した後はほとんど回転しないこと,などが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の目標は,フローフォーカッシングの技術を用いて粒子懸濁液をフィルム状に伸張する技術を開発し,本装置を用いて懸濁液に分散する粒子の運動の観察を行うことであった.本目的は,おおむね達成されている.一方で,粒子の観察領域を広げるためのマイクロスコープを移動させる装置の製作は計画よりも遅れている.しかしながら,研究の進捗状況に大きな問題は生じていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,フローフォーカッシングを用いた複屈折トレーサー粒子による粒子懸濁液の流れ可視化手法の開発を行う.この手法は,複屈折性を有するトレーサー粒子を含む分散媒の流体をフィルム状にして,粒子懸濁液の流れ場の観察したい面内に流入させる.流路は,クロスニコル状態にした偏光板を回転させ,その際の粒子の運動をマイクロスコープで観測する.流路を挟み込む形でクロスニコル状態で回転する偏光板の作成が難しい場合には,通常のクロスニコル状態での実験を行う. 加えて,平成28年度の実験結果より,観察時間内の粒子の総回転量が小さいことから,粒子の回転運動の把握が困難な場合があった.このことから,粒子の観察時間を増やすための装置の改良を合わせて行うこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
観察用カメラを移動させるためのシステムの設計が計画よりも遅れたため,平成28年度に発注予定だったものが平成29年度にずれ込んだことから,大きな差が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定していた,移動ステージなどの購入を行い,移動装置の製作を行う.また,当初の予定通り,複屈折性を利用した,観察を行うために各種光学系の購入を行う.
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