研究課題/領域番号 |
16K06100
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
細谷 和範 津山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60509107)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 流れの可視化 / MRI / 流体機械 / 流動ファントム / PIV / 摂動流 |
研究実績の概要 |
現在流体機械の設計ではCFD(数値流体力学)技術を駆使してエネルギー消費効率がよい設計が行われ,計算された複雑な流体の動きや温度場,圧力場はカラフルなCGにより直観的に把握できる.また医療分野においてもCADと連動したCFD技術が利用されており,心臓や血管内の血流のシミュレーション等による流体解析が疾患治療に役立てられている.このように複雑な流れ場を過ぎる流れの把握は医工両分野で重要であるが,CFDだけでは十分といえないケースも多く,乱れの大きな流れ場や気液が混じり合う多層流場,流路内の壁面やプロペラなどの物体が動く複雑な流れ場では実機を用いた検証実験も重要である. 本研究では近年発展が著しい医療分野の非侵襲性の画像診断装置の一つである核磁気共鳴画像診断装置(MRI)を用いて,複雑な配管内の流れやポンプ等の流体機械の流れをどの程度描写可能かを調べるためにシンプルな水理実験装置(流動ファントムシステム)を試作し,医工両分野で見られる管内流やポンプ内の流れの可視化を行う. 本年度はMRIガントリー内に収まる大きさで,さまざまな流路を試験することができる流動ファントムシステムを試作した.試験可能な流れは層流域の流れと周期数秒で往復する摂動流場とした.この摂動流は検査室外から供給される空気圧を利用したエアーアクチュエーターにより作り出される.MRIによる動態イメージングは研究協力者が所属する病院が所有するMRIを用いて行い,タグを与えた流体塊を時間分解撮影するTime-SLIP法を用いて移流する水塊画像を撮影した.ボールバルブ型ファントムと二重管を用いて試験を行った結果,良好な描写と再現性が確認された.試験で得られた結果は学会発表と論文投稿により公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた以下の計画はおおむね達成できているが,試験流速と試験方法に課題が見つかった. 平成28年度はMRIガントリー内に設置可能な水理実験装置と試験流路(流動ファントム)の開発が主な課題であった.試作した流動ファントムシステムは着脱式の流動ファントムが容易に設置可能で,一定流量で吐出される水タンクにより形成される層流場と空気圧アクチュエーターによる周期数秒の摂動流場を作り出すことに成功した.現在,試験時にみられた水漏れやファントムの着脱不良を改善するために装置の改良を行っている. 平成28年度は測定対象として管内流のように解析解による予想やPIVとの比較が可能な流れ場として円管内を過ぎる流れ(Re200程度の一様流と周期2秒の摂動流)による流速分布や水塊の挙動について評価を行い,MRIで描写される水塊の挙動は解析解やPIVと整合することがわかった.またベンチュリー管や二重円管を通過する層流場内の水塊の挙動についても数値シミュレーションと整合する結果を得た.しかしながら,Re数が200程度の層流場による試験は良好であったが,流れ場に突起部がある摂動流場では水塊パターンが不明瞭になり,流速分布の推測が困難になることや,水タンク容量の制限やMRIの描写シーケンスの設定から試験可能な流速帯が限られることがわかり,乱流域の水理実験は困難であることがわかった.また当初計画していた分岐管や屈曲管,翼素や円柱などの物体まわりの流れや気泡を含むような混層流,粘度の異なる液体の攪拌の様子については試験ファントムの製作の遅れから実施できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では2年目より工業製品や生体内の流れを模した流動モデルの可視化実験が計画されていたが,2年目以降は初年度に未達成であった分岐管や屈曲管,翼素や円柱などの物体まわりの流れや気泡を含むような混層流,粘度の異なる液体の攪拌の様子について可視化実験を行う.これらの結果に基づき流れを非接触に把握することが難しい工業製品や人体の体液の流れをモデル化した流動ファントムを製作し,MRIによる流れの可視化実験を行う(弾性管内を過ぎる定常流,脈動流,ケース内で攪拌される潤滑油を想定した攪拌流れ,多数のフィンのある熱交換器内の流れ,流量バルブ,多層の測定による噴流の3次元的な流れ構造など).描写に使用するMRIは前年度と同様に2Dの描写が可能なTime-SLIP法によるイメージングとする.初年度に行った熱交換器を想定した二重円管や弾性管内の流れは工業分野だけでなく,医療分野における脳脊髄液の流れにも共通したものであることから,平成29年度は研究協力者の竹内医師と小野教授を研究分担者に加えて本研究課題を実施したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
ハイスピードデジタルカメラの購入価格が安価であったこと,可視化用レーザー光源を購入しなかったことにより次年度使用額が増加した.
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次年度使用額の使用計画 |
年度計画にある柔軟な空気圧駆動装置を樹脂素材で試作するために安価な3Dプリンターを購入するために使用したい.
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