研究課題/領域番号 |
16K06102
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
満尾 和徳 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (10371105)
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研究分担者 |
青木 良尚 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (90371103)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 流体制御 / プラズマアクチュエータ / 剥離制御 / プラズマ |
研究実績の概要 |
H28年度の研究実績概要を以下に記す。 ①高レイノルズ数流れにおけるPA剥離制御効果の実証 本研究では、PAによる剥離制御効果を0.8m×0.45m高Re数遷音速風洞で実証する。H28年度は風洞試験の予備実験のために、風洞の圧力環境を模擬できる高圧チャンバーを製作し、PAにより発生する推力計測装置を製作した。PAの放電により発生する誘起流は周りの雰囲気ガス(空気)の圧力に依存するため、風洞試験前にPA誘起流の基本特性を調べておく必要がある。誘起流により発生する推力(運動量)が大きいほど流れを効果的に制御できる。本研究では、PA誘起流が発生させる推力を計測する手法として、振り子式による推力計測システムを考案した。高圧チャンバー内に計測部を収めることができ、チャンバー壁に取り付けられた光学窓を介してレーザー変位計で揺れ幅を簡単に計測できる利点がある。この方式を採用することにより、圧力を変化させながらPA推力を計測することができるようになる。 ②PA放電音低減研究 PAからの放電音を騒音計を用いて計測したところ、放電電圧(正弦波形)と放電音強度の相関が明らかになった。2式のPA電極を誘起流が向い合せに発生するように平板に配置し、片方のPA放電電圧の位相を変えて放電したところ、ノイズキャンセリング効果(波の重ね合せ)により放電音の大きさが変化することが確認された。本実験条件では、1/4波長位相をずらすことによってPA放電音低減効果が最も高くなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高圧チャンバーを用いたプラズマアクチュエータ(Plasma Actuator:PA)の推力計測の実験が遅れている。H29年度は、0.8m×0.45m高Re数遷音速風洞での実験を予定しており、その予備試験として、H28年度は高圧チャンバーを用いた推力測定試験を計画していた。高圧チャンバーの設計・製作は予定通りに進んだが、PA推力計測システムを構築するのに当初計画よりも時間を要したため、実験データ取得までは達成できなかった。 本実験ではPAの推力計測に振り子式の方法を用いた。この方法を用いれば、弱い推力も計測可能であり、高圧チャンバーに取り付けた光学窓から変位量を簡単に計測することができる。推力による振り子の変位量はレーザー変位計を用いて計測する。PAの推力は、本実験条件では、μN~mNレベルと微小である。そのため、振れ幅(振幅)を大きくするためにはPA電極の重量を小さくする必要があるが、一方で、軽量になるとPAに接続する電線のテンション等が振幅に影響する。推力と振幅の適正な相関関係を得るまでに試行錯誤が必要になり、当初予定以上の時間を要した。結果として、H28年度中に実験データを取得するところまでできなかった。しかし、実験装置は完成しているので短期間で推力データ取得可能であり、H29年度計画の風洞試験を予定通り実施できる見込みである。 一方、PA低騒音化の実験については、ノイズキャンセリング法により放電音を低減できることが実証できており、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度以降は、プラズマアクチュエータ(Plasma Actuator:PA)による剥離制御効果を、0.8m×0.45m高Re数遷音速風洞において実証する。P0(総圧)を変えることによってレイノルズ(Reynolds:Re)数を調整する加圧型風洞であるため、PA制御システムを高圧環境下で動作させる初めての試みである。模型は2次元翼を用い、PAは翼前縁に取り付ける。剥離制御効果は模型表面静圧計測、シュリーレン画像計測(高速度カメラ利用)等を用いて評価する。また、PA制御による動的流れが模型表面に与える空力的効果を可視化するために高速応答型の感圧塗料(Pressure-Sensitive Paint:PSP)計測を行う。高Re数風洞での剥離制御効果が実証できれば、PA適用範囲拡大に貢献できる。 また、PAの放電音低減に関しては、ノイズキャンセリング法を考慮した作動条件であっても、剥離流を抑制できることを風洞試験で確認するとともに、PA構成材料と放電音との関係についても調べる。PAを低騒音化することができれば騒音低減デバイスとしての利用も可能になる。 H30年度後半は、これまでの研究成果をまとめて特許申請や論文投稿を行う。また、H29年以降は年数回の国内学会発表と、最終年度に海外学会発表を予定しており、研究成果を国内外に発信するとともに、研究者同士で情報交換を行い、研究成果のクオリティを高めていきたい。
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