研究課題/領域番号 |
16K06104
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
林田 和宏 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80369941)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 燃焼 / 粒子状物質 / ナノ構造 / レーザラマン分光 / レーザ誘起赤熱発光 |
研究実績の概要 |
炭素質PM(PM:粒子状物質)はディーゼル機関を始めとする各種燃焼装置の排ガスに含まれる有害物質であり,その酸化反応性は炭素質PM内部のナノ構造に大きく左右される.申請者の過去の研究において,火炎内で成長した炭素質PMがその後火炎内で経験する酸化履歴が,最終的に火炎外に放出される炭素質PMの排出濃度とナノ構造を決定づけることを見出したものの,その詳細は明らかにされていない.本研究では火炎内における炭素質PMの酸化履歴がナノ構造に及ぼす影響を明確にすることを目標としている. 平成28年度は,火炎構造が比較的単純であり,計測の容易な気体燃料の層流火炎を対象として実験を行った.エチレンを燃料とする同軸噴流拡散火炎を用い,炭素質PMの前駆物質である多環芳香族炭化水素(PAHs),炭素質PMの主な酸化剤であるOHラジカルおよび炭素質PMの火炎内における濃度分布をレーザ誘起蛍光法(LIF)とレーザ誘起赤熱発光法(LII)で計測した.さらに,火炎中心軸上の各高さにおける炭素質PMの一次粒子径を,時間分解レーザ誘起赤熱発光法(TiRe-LII)により評価するとともに,プローブを用いて火炎内の炭素質PMを採取し,その内部構造をレーザラマン分光法で解析した.その結果,炭素質PMを構成する炭素結晶子のサイズは火炎の位置によって変化することが確認された.炭素質PMの成長領域では炭素結晶子の増大が見られ,成長した炭素質PMがOHラジカルの存在する酸化領域に入ると粒子径は減少するものの,炭素結晶子の増大は継続する.その後,炭素質PMがOH濃度の高くなる領域に入ると炭素結晶子の縮小が始まることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の主な目的は,火炎内における炭素質PMの酸化履歴がナノ構造に及ぼす影響を明らかにすることであるが,成長した炭素質PMがOHラジカルの存在する酸化領域に入っても粒子径は減少する一方で炭素結晶子は成長を続け,その後,炭素質PMがOH濃度の高くなる領域に入ってから炭素結晶子の縮小が始まるという新規的な知見が得られており,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は液体燃料の層流拡散火炎を解析対象とする.プール燃焼器を用いて液体燃料の定常なプール拡散火炎を形成し,平成28年度と同様の解析を行う. 1.単一成分液体燃料の解析 燃料種の影響を調べるため,炭素数が同一かつ沸点が同程度である以下の炭化水素をベース燃料とし,各燃料の拡散火炎を解析対象とする. 【パラフィン系炭化水素:n-デカン(C10H22,沸点174℃)】・【ナフテン系炭化水素:n-ブチルシクロヘキサン(C10H20,沸点181℃)】・【芳香族炭化水素:n-ブチルベンゼン(C10H14,沸点183℃)】 2.炭素質PMのナノ構造と酸化反応性の評価 サンプリングした炭素質PMを赤外線加熱炉で昇温加熱し,炭素質PMの酸化で生成するCO2濃度(部分酸化で生成するCOは酸化触媒でCO2に転換)の測定を行う.そして,CO2濃度の時間変化から酸化反応性を評価する.
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