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2016 年度 実施状況報告書

新規機能性を有する有機分子膜の界面親和性に関する分子論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K06105
研究機関東北大学

研究代表者

菊川 豪太  東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90435644)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード自己組織化単分子膜 / 分子動力学法 / 輸送現象 / 界面熱抵抗
研究実績の概要

自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer, SAM)は,固体表面の修飾技術として広く研究が進んでおり,表面の物理化学的特性を分子スケールから柔軟に制御する技術として応用が進んでいる.本研究では,分子動力学(MD)シミュレーションを用いて,SAMを介した熱物質輸送機構を明らかにすることを目的とし,分子スケールから新規的な界面修飾材料をデザインする際に有用となる分子レベルの設計指針を模索することを目標に研究を行っている.特に,SAM分子素材として熱的・化学的安定性に優れるフルオロカーボン系のSAMを介した界面熱輸送特性について種々の溶媒分子(水,ハイドロカーボン,フルオロカーボン溶媒)を用いて解析を行った.フルオロカーボン素材は,冷媒としても既に広く利用されており,工業・産業応用の観点から基礎的な知見を得ることは有用性が高いと考えられる.ここでは,MDシミュレーションで利用するフルオロカーボンSAMおよびフルオロカーボン溶媒の分子モデルの構築を第一原理計算を利用して行った.実際に,構築されたモデルが溶媒の熱物性やSAMの構造をよく再現することを確認している.さらに,そのモデルを用いてSAM溶媒間の界面熱輸送解析を行った.この際,炭化水素材料のフッ素化の程度と熱輸送特性との関連性について詳細に分析を行った.
これらの研究を通じて,フルオロカーボン系など親和性の低い媒質間の熱輸送効率を向上するためには,親和性改善のための分子選択・分子デザインを必要とすることが明らかとなり,本研究を通じてデザイン指針の提案を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,自己組織化有機分子薄膜および溶媒との界面における熱輸送特性を支配する分子論的機序を明らかにすることが目的である.今年度では,特にフルオロカーボン材料を対象として,本来的に界面親和性の低い界面において,熱輸送特性を向上させる分子デザインの指針を実際の解析結果とともに提案した.以上のように今年度の目標としては概ね達成できているといえる.ただし,界面自由エネルギーの解析についてはやや遅れているため,次年度では重点的に実施する予定である.

今後の研究の推進方策

今後は,SAMと種々の溶媒との親和性(界面自由エネルギー)という観点から,その定量化を行った上で,界面熱抵抗との関連性を明らかにする.ここでは,界面自由エネルギーの解析手法についてこれまでに提案されている手法(熱力学的積分法や自由エネルギー摂動法)をベースとして理論の拡張および解析を行っていく.最終的にこれまで得られているSAM分子種による影響や溶媒との組み合わせについて考察し,効率的な界面熱輸送を実現する表面修飾について,分子設計の立場から提案を行う.

次年度使用額が生じた理由

消耗品費として数値計算に関連したPC周辺機器やデータ解析,整理に利用するソフトウェアを購入する予定であったが,当該年度中では既存の数値計算設備で十分であったので,次年度使用額が生じた.

次年度使用額の使用計画

より多くの数値シミュレーションを行い,それに伴うデータ解析を行う必要が生じるため,次年度以降これに関連したPC周辺機器やソフトウェアが必要となることが予想される.したがって,次年度に使用する予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Thermal energy transport over the solvent interface of self-assembled monolayers with different fluorination2017

    • 著者名/発表者名
      Gota Kikugawa, Mitsuru Nemoto, Taku Ohara
    • 雑誌名

      Proceedings of the Asian Conference on Thermal Sciences 2017

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Molecular mechanism for thermal boundary conductance over fluorinated SAM-solvent interfaces2016

    • 著者名/発表者名
      Mitsuru Nemoto, Gota Kikugawa, Takeshi Bessho, Seiji Yamashita, Taku Ohara
    • 雑誌名

      Proceedings of the 4th International Forum on Heat Transfer

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] Thermal energy transport over the solvent interface of self-assembled monolayers with different fluorination2017

    • 著者名/発表者名
      Gota Kikugawa, Mitsuru Nemoto, Taku Ohara
    • 学会等名
      The Asian Conference on Thermal Sciences 2017
    • 発表場所
      Jeju (Korea)
    • 年月日
      2017-03-26 – 2017-03-30
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular mechanism for thermal boundary conductance over fluorinated SAM-solvent interfaces2016

    • 著者名/発表者名
      Mitsuru Nemoto, Gota Kikugawa, Takeshi Bessho, Seiji Yamashita, Taku Ohara
    • 学会等名
      The 4th International Forum on Heat Transfer
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2016-11-02 – 2016-11-04
    • 国際学会
  • [学会発表] フッ素系SAM-溶媒界面における熱輸送特性に対するフルオロカーボン長さの影響2016

    • 著者名/発表者名
      根本充, 菊川豪太, 別所毅, 山下征士, 小原拓
    • 学会等名
      日本機械学会2016年度年次大会
    • 発表場所
      九州大学伊都キャンパス(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-09-11 – 2016-09-14
  • [学会発表] フルオロカーボン系SAMと各種溶媒の界面熱輸送と界面親和性に関する分子論的研究2016

    • 著者名/発表者名
      菊川豪太, 根本充, 別所毅, 山下征士, 小原拓
    • 学会等名
      第53回日本伝熱シンポジウム
    • 発表場所
      グランキューブ大阪(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2016-05-24 – 2016-05-26

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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