研究実績の概要 |
2018年に発表された衝撃波管を用いたジエチルエーテルの燃焼研究論文で,温度650-1100 K,圧力18,40 barの内燃機関に近い温度・圧力環境下において冷炎の熱発生が二段に分かれる現象が示唆され,昨年度までに構築した研究代表者らのジエチルエーテルの詳細反応機構が二段の冷炎を再現することが指摘された [Y. Uygun, Combust. Flame 194 (2018) 396-409].この事実は本研究で提案された反応速度定数や詳細反応機構の妥当性を支持するものであり,また,内燃機関の新たな燃焼制御を提案する上でヒントになり得るものである.そこで,詳細反応機構を用いて二段冷炎の要因の解析を実施した.ジエチルエーテルの反応はそのC-H結合解離エネルギーの特性から,ほぼ9割がエーテル酸素原子の隣にあるCH結合の反応により進むため,低温酸化反応機構に含まれる中間化学種は複数存在するものの,反応経路はほぼ1通りである.そのため,アルキルラジカル,ヒドロキシアルキルラジカルの低温から高温酸化への移り変わりが明確に発熱量として反映されるために二段の冷炎として観測されると推察された.また,ジエチルエーテルとメタンの混合燃料に対する燃焼反応機構の検証も実施した.一方,昨年度までに構築・改善した反応速度定数の一般則を広島大学の三好が開発中の詳細反応機構自動生成プログラム(KUCRS)のライブラリに登録し,様々な化学構造をもつエーテル燃料の詳細反応機構を自動生成に対する準備を進めている.
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