研究課題/領域番号 |
16K06119
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
北川 石英 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (80379065)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 気泡運動制御 / 機能表面 / 自然対流 |
研究実績の概要 |
気泡は,スケール別に,マイクロバブルから大変形を伴うミリバブルに分類され,現在,機械・化学・船舶・医療の分野において盛んに利用されている.このような状況のもと,多くの場合では,壁面近傍の気泡挙動が,利用効果や機器性能に直接的影響を与える.このため,壁面近傍気泡挙動の人工的制御が可能となれば,気泡注入効果のさらなる向上が期待できる.研究①では,親水面と撥水面を組み合わせた「機能表面」と「気泡注入法」を複合利用し,鉛直加熱平板自然対流熱伝達の促進を行った.その結果,撥水部の面積と親水部の面積比が1:100,撥水部の幅が0,0.5,2mm の条件では,広範囲の領域において,機能表面の利用による伝熱促進効果が確認できた.特に,熱伝達率の増加率は最大16%であった.研究②では,傾斜自然対流気液二相熱伝達に対する伝熱面表面性状の影響を明らかにするため,温度計測と気泡速度計測を行った.その結果,伝熱板傾斜角度が30~50°の範囲では,いずれの傾斜角度においても,撥水面の場合の熱伝達率よりも親水面の場合のそれが高いことがわかった.これは,親水面の場合の壁並行方向の気泡速度が撥水面の場合のそれよりも高いことに起因する.研究③では,並列配置および千鳥配置の撥水性ポケットを有するマイクロチャネルを作製し,外部エネルギ供給を必要としない自立型気泡生成法の開発を行った.その結果,いずれのチャネルにおいても,ポケットからの断続的な気泡生成が観察された.また,千鳥配置の場合の気泡生成頻度に比して,並列配置の場合のそれが高いことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①「気泡注入法と機能表面の複合利用による自然対流熱伝達の促進」:成分の異なるアルミニウム箔およびステンレス箔を複数の企業から購入し,その中から機能表面に最適な金属箔の選定を行った.その結果,ステンレス箔を利用した場合,親水部にて気泡が滑らかな運動を呈することがわかった.また,作製した全ての機能表面に対し,熱伝達の促進を図ることができた.しかし,伝熱面近傍の液相速度・温度計測を行うことができなかったことから,気液二相間の相互干渉機構を包括的に理解するには至らなかった.②「伝熱面表面性状が自然対流気液二相流に与える影響」:伝熱板傾斜角度が30~50°の範囲において,壁面温度計測および気泡速度計測を行い,撥水面および親水面に対する熱伝達特性を明らかにすることができた.しかし,伝熱面熱流束に対する依存性を確認することができなかった.③「撥水性ポケットを利用したマイクロチャネル内気泡生成法の開発」:並列配置および千鳥配置の撥水性ポケットを有する2種類のマイクロチャネルを作製することができた.また,いずれのチャネルにおいても,外部エネルギを供給せずに,ポケットからの断続的な気泡生成に成功した.しかし,生成気泡同士の相互干渉機構を明らかにすることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
①「気泡注入法と機能表面の複合利用による自然対流熱伝達の促進」:今回の結果を踏まえ,今後は伝熱面近傍の気液二相速度・温度計測を行う.具体的には,気泡群の粗密構造に着目し,気泡間距離とその範囲内における液体速度場・温度場との関係を調査する.また,平均ボイド率などをパラメータとして,伝熱面近傍での液体統計量や熱伝達率を算出する.得られた結果を比較・照合・再構築し,スケール間の相互干渉機構を十分に考慮しながら,二相流場の熱流動機構の熱流動制御のためのデータベース化を行う.②「伝熱面表面性状が自然対流気液二相流に与える影響」:3パターンの壁面熱流束に対して,温度計測・気液二相速度計測を行い,壁面熱流束と伝熱面表面性状(もしくは伝熱特性)との関係を詳しく調査する.③「撥水性ポケットを利用したマイクロチャネル内気泡生成法の開発」:並列配置および千鳥配置の撥水性ポケットを有する2種類のマイクロチャネルに対し,レイノルズ数をパラメータとして,気泡生成頻度などの測定を行う.得られた結果をもとに,マイクロチャネルにおける流動制御のためのデータベース化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:①PTV(粒子追跡速度計測法)によって気液二相速度計測を行う際,流れ場にトレーサ粒子を注入する.予備実験結果から,機能表面の撥水部では,トレーサ粒子の付着が観察された.このため,実験ごとに機能表面を作り直す必要があり,当初の想定以上の費用が必要となった.②2018年10月に米国にて開催される「Proc. 29th International Symposium on Transport Phenomena」において今回得られた成果の発表する.現在のところ3件の研究発表を予定しており,当初の想定以上の旅費が必要となった. 使用計画:前年度の未使用金を,機能表面の作製に必要な「ステンレス箔」・「撥水塗料」・「紙テープ」の購入,そして,国際会議での成果発表のための「旅費」に使用する.
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