本申請課題では,高機能ヒートシンクとして空隙率を制御した金属多孔体と蓄熱機能を有する相変化エマルションの技術融合による,新たな蓄熱式高度熱交換デバイスの開発とその特性評価を目的としている.このデバイスを実現し技術展開を行うためには,金属多孔質体である高機能ヒートシンクの造形手法の確立,相変化エマルションの基礎物性の把握,およびデバイスとしての特性評価が必要となる.本研究期間内における研究内容および実績の概要を以下に述べる. (1)金属多孔質構造体の製作手法の確立 前年度までに,金属多孔質構造体について,形状および材料の両面より実験的に検討を行った.形状については,マルエージング鋼を用いて空隙率の異なる多孔体の試作を行い,最適形状の評価を進め複雑構造体熱交換器の設計指針を得た.一方材料については,熱伝導率の高い銅系粉体材料の基礎的なレーザー照射による粉体積層造形条件試験の結果,良好な造形条件が得られた.一方,アルミニウム系粉体材料については,反射率が高いなどの理由によりレーザー3Dプリンタによる造形は難しいという結果が得られた.最終年度では,銅系粉体を材料とした3Dプリンタを用いたヒートシンクを作製し,SUS系材料を用いた場合に比べて,熱交換時の温度効率として平均28.9%の向上が見られた. (2)相変化エマルションの強制対流熱伝達実験 前年度までに,分散相に相変化物質であるn-ヘキサデカン(融点18℃)を,分散媒に水を選択したO/W型エマルションの作製手法を確立した.また,作成した相変化エマルションの基礎的熱伝達特性を評価するための実験装置を製作した.二重管式熱交換器による伝熱実験から,エマルションを熱媒体とした伝熱機構では,相変化物質の融解による特異な熱移動挙動が起こることを明らかにした.
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