研究課題/領域番号 |
16K06121
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
浅野 等 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (10260647)
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研究分担者 |
村川 英樹 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40467668)
杉本 勝美 神戸大学, 先端融合研究環, 助教 (40420468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電子機器冷却 / 沸騰熱伝達 / 伝熱促進 / 限界熱流束 / 膜沸騰遷移 / ボイド率 / サブクール沸騰 / 溶射被膜 |
研究実績の概要 |
小温度差での高熱流束除熱には沸騰熱伝達が必要不可欠であるが,一般の平滑面では過熱液層への熱移動が支配的であり,沸騰気泡核数密度の増大が必要とされる.一方,伝熱面上での沸騰気泡核数密度の増大は,伝熱面近傍の蒸気生成量の増大につながるため,局所ボイド率の増大により膜沸騰に遷移する懸念もある. 本研究では,溶射による多孔質構造によって沸騰伝熱促進,サブクール沸騰での限界熱流束増大効果が得られることを明らかとしてきたが,大きなサブクール度でのサブクール沸騰における気液界面構造は,液中での凝縮も同時に行われるため複雑であった.沸騰伝熱促進面でなぜ限界熱流束が増大したのか,さらに向上させる方策はないか,を探るため,平成28年度は流路平均ボイド率に加えて浸漬型静電容量プローブを開発し,プローブと伝熱面間距離を2 mm として沸騰伝熱面上の局所ボイド率特性を明らかにした.平成29年度は,バルク液中での凝縮速度の影響を明らかにするため,開発試験部を用い,これまで使用していたフロリナートFC72より潜熱が大きいHFC245fa を冷媒として,入口サブクール度20~50 Kの条件での沸騰実験を行った.その結果,HFC245faにおいても,溶射被膜で沸騰伝熱促進および限界熱流束増大効果が得られることが明らかとされた.サブクール沸騰からの膜沸騰遷移において,作動流体に水を用いた場合に観察されている気泡微細化沸騰は観察されなかった.膜沸騰遷移での詳細観察から,膜沸騰遷移時に圧力,ボイド率の低下が確認され,平滑面,溶射面ともにサブクール度の増大とともに圧力の低下は小さくなった.一方,ボイド率の低下の程度は平滑面ではサブクール度が大きくなるにつれて小さくなったが,溶射面では大きくなった.これは,溶射面では限界熱流束が高いためでもあるが,膜沸騰に至る過程が異なることを示唆しており,詳細な分析が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,研究項目として,① 静電容量式ボイドプローブの空間および時間分解能の向上,② 浸漬型静電容量プローブの開発,③ サブクール沸騰での平均および局所ボイド率と沸騰熱伝達の評価,④ 沸騰遷移時の平均および局所ボイド率と限界熱流束の評価,そして⑤ 低沸点純冷媒HFC134aを用いた実験,の5項目を設定していた.平成28年度には,課題①,②を実施し,課題③,④での計測を実現した.平成29年度には,蒸発潜熱が大きい低沸点純冷媒HFC-134aを用いた実験に取り組んだが,試験部ロウ付け箇所の不具合から耐圧が得られず,漏洩し,HFC-134a より沸点が高いHFC-245fa(沸点:約15℃)に変更した.これまでのFC72より,蒸発潜熱が大きい冷媒ではあるが,概ね同様の傾向が得られた.実験,計測は順調であるが,当初予定の冷媒を変更することになったことから,試験部の耐圧化を施すとともに,冷媒物性の影響について考察をすすめる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に引き続き,項目③ サブクール沸騰での平均および局所ボイド率と沸騰熱伝達の評価,項目④ 沸騰遷移時の平均および局所ボイド率と限界熱流束の評価を進める.平成28年度での実験では冷媒としてフロリナートFC72(沸点57℃)を使用した.FC72は潜熱が小さいことからサブクール液中での凝縮挙動への潜熱の影響を評価するため,HFC-245faを用いて実験を行ったが,FC72と同様の結果となった.当初予定の低沸点純冷媒HFC134aでは,試験部での冷媒リークトラブルが発生したため,系の圧力を低くできるHFC-245faとしたが,今後,試験部の耐圧化を急ぐとともに,表面張力の影響評価も課題となった.高サブクール度,高熱流束時において他の研究者によって広く確認されている気泡微細化沸騰が起こりうる条件下で,沸騰伝熱促進面による沸騰核密度増大効果が気液界面構造にどのような影響を及ぼすのか明らかにしたい.
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