本研究では,新規有機系収着剤を用いた蓄熱システムの構築を目的としている.有機系収着剤は,シリカゲルなどの無機吸着剤と同様に水蒸気を取り込み,吐き出す性質を有する物体であり,本収着剤の粒子やガラスなどをコアにして周囲に収着剤を塗布した複合粒子を用いて,低温熱源を利用して乾燥状態にした収着剤を貯蔵して,必要な時点で空気の水蒸気を吸湿させることにより発熱をさせて熱を回収し,その後再び乾燥させるサイクルを行うシステムを展開するための基礎的知見を得る. 平成28年度は,想定するシステムを模擬して乾燥(脱着)と吸湿(収着)挙動を観察するための実験装置を作製した.収着剤粒子を流動層型の蓄熱槽に充填し,槽下部より温空気空気を流入し,収着剤粒子を流動状態にさせ,収着剤の乾燥(脱着)操作を行い,その後,乾燥した収着剤により空気の水蒸気の吸湿を行うものである.平成29年度は,収着剤粒子等を潜熱貯蔵材料として用いるための基礎的なデータを収集するために,作製した実験装置を用いて種々の基礎的実験を行った. 平成30年度には,収着剤粒子およびガラスなどのコアに収着剤を塗布した複合収着剤粒子を用いて実験を行った.潜熱貯蔵に関連する条件を変化させた際の特性を把握するために,前年度の測定と合わせて実験因子を空気流速,温度,湿度,および粒子量などとし検討を行った. さらに,効率的な蓄熱の実現を目的として,粒子層の熱移動特性の詳細な把握をするために,容器に充填した粒子層の内部の有効熱伝導率について,作製した熱伝導率想定装置を用いて測定を行うとともに,有効熱伝導率の推定に有用な熱移動のモデルを検討した. 全体的な結果として,有機系収着剤を用いた蓄熱システムの構築のための有用な資料を得た.
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