研究課題/領域番号 |
16K06124
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中原 真也 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20315112)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 予混合燃焼 / 微小火炎 / 燃焼速度 / 火炎サイズ / 火炎伸長 / ガス流動 / ルイス数 / マークスタイン数 |
研究実績の概要 |
初年度となる本年度は、ガス流動中での微小火炎の燃焼促進に最適な着火条件を解明するために必要な、次の予備的な事項を主に検討した。 まず、燃焼器中心付近に等方性乱流場を得ることが出来る既設の乱流燃焼定容器で、微小火炎の燃焼特性を把握できるよう点火システムの改修作業に着手した。ここでは、火炎半径が5mm以下の微小な火炎領域で燃焼速度特性を把握するために、最初に、高速シュリーレン撮影、静電探針や自発光分光の観測も可能にする微小火炎用点火システムの試作を行った。また、LDVを用いてガス流動分布を計測できるか検討も行った。その結果、基本的な点火栓の仕様は既存のものと同等であるが点火電極の幾何学的な配置関係が異なる、既存のものと新設のものの比較から点火電極配置の影響は小さいこと、またイオン電流波形およびOH*とCH*自発光の同時分光が概ね可能であることが確認できた。また、ガス流動場での計測について問題点の抽出が行えた。 一方、ガス流動場での着火および微小火炎の燃焼および火炎伝ぱを安定化・維持することはさらに困難になることが予測される。そこで、さらなる熱効率の向上および低NOx燃焼化を意図し、当量比0.5の超希薄でのプロパン予混合微小火炎の燃焼特性に与える水素添加の影響を既存の点火システムを使用し検討し、これら混合気の基礎的な燃焼特性を明らかにした。その結果、プロパンー空気では希薄可燃限界以下の当量比0.5でも水素を添加することにより、プロパン予混合微小火炎の燃焼特性は改善し、水素添加量が燃料中の内割りで0.8程度とると燃焼特性は火炎半径の影響を受けなくなることを明らかにした。また、これは既に明らかにしている当量比0.8の希薄混合気の場合と概ね同様の燃焼特性であることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、当初の計画のとおり、微小火炎のガス流動中での火炎性状の観測のために必要な、高速シュリーレン撮影、静電探針および自発光分光の計測が可能な点火システムの試作ができ、これら計測法によるデータの取得の確認、さらに問題点の抽出ができた。また、ガス流動場での微小火炎の観測に関する問題点を明らかにできた。 さらに、ガス流動中での微小な火炎では、さらに安定した火炎核形成や火炎伝ぱ手法が求められるが、ガス静止場ではあるが超希薄プロパン混合気への水素添加の効果を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる平成29年度は、ガス流動中での微小火炎の燃焼促進に最適な着火条件を解明するために、実際にガス流動中での微小火炎の燃焼特性について分子拡散特性に着目しつつ検討する。 具体的には、初年度に明らかになった問題点を考慮し改良した点火栓を製作して、等方性乱れ場が得られる燃焼器を使用し検討を開始する。また、分子拡散特性の影響について詳細に検討するために、燃料の種類だけではなく、希釈ガスに窒素に加え二酸化炭素なども対象とし、初年度と同様の検討も進める。 さらに、2年目には、ガス流動特性による差異が、微小火炎の着火および燃焼特性に与える影響を評価するために、等方性では無く主流を有するスワール場での微小火炎の燃焼特性や点火電極条件の影響について検討を開始する。そのために、既設の扁平円筒状定容燃焼装置を改修作業を進め、予備的な実験を試みる。ここでは、燃焼状態を把握するために圧力履歴も計測する。また並行して、微小な火炎の壁との干渉について検討するために、上述の扁平円筒状定容燃焼器などを用いて、壁面近傍での火炎の挙動や燃焼特性の把握を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由の一つは、平成29年7月末から米国で開催される26th International Colloquium on the Dynamics of Explosions and Reactive Systems (ICDERS 2017)に出席する旅費を確保するためである。本国際会議は、2年に一度開催される燃焼に関わるすべて分野の最新かつ最先端の研究に関して講演・討論できるシンポジウムであり、出席する意義は大きい。また、当初LDVをバージョンアップする計画であったが支給された予算が減額されたこと、および現有のLDVが故障したことから購入計画を変更させざるをえなかったためである。さらに、本研究では高速度カメラや光源など高価な機器を使用しているが、故障した場合は本研究の遂行が困難になる。そこで、その修理費も高価であるため、その予備費として繰越させて頂いた。
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次年度使用額の使用計画 |
経費は、本研究を推進するために有意義に使用させて頂きます。 具体的には、7月末から開催される国際会議への旅費および参加費に、備品として老朽化しているA/D機器等の更新、また修理費としての予備費は破損してしまった観測窓等の光学部品や燃焼器部品などの購入を予定している。
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