最終年となる3年目は、まずガス流動として等方性乱れ場に対しては、改修した定容燃焼器および点火装置を用い、乱れ強度を0.35m/sに加えて1.76m/s程度まで高い強度で実験を実施した。混合気には、分子拡散特性の影響について詳細に検討するために燃料に分子拡散特性さらにはルイス数が大きく異なるプロパンと水素を用い、希薄混合気の燃焼促進法を評価するために当量比0.8と1.4における水素添加量の影響を検討し、さらに高相対乱れ強度場での燃焼促進法を評価するために層流燃焼速度を25cm/sに加えて15cm/sに揃えた混合気も対象にした。その結果、最小着火エネルギーは、希薄の当量比0.8では水素の添加量を増やすほど、逆に過濃の当量比1.4では減らすほど、小さくなり着火特性が改善することを明らかにした。この傾向には、混合気のルイス数と分子拡散特性に強い相関関係があることがわかる。さらに、相対乱れ強度が12程度の高強度乱れ場でも、この相関関係は維持される可能性があることを明らかにした。 一方、ガス流動特性による差異および壁の有無が、微小火炎の着火および燃焼特性に与える影響を評価するために、主流を有するスワール場での微小火炎について検討した。ここでは、改修した扁平円筒状定容燃焼器および点火装置を用い、当量比0.5から1.4の水素添加プロパン混合気を対象に、シュリーレンによる観測および圧力履歴さらには未燃燃料量を計測し、着火特性や火炎伝ぱなどの燃焼特性を把握した。その結果、スワール流速が30m/sの高ガス流動場でも、上述の等方性乱れ場と同様に、混合気のルイス数と分子拡散特性が燃焼特性に強く影響していることを明らかにした。 以上より、ガス流動中での微小火炎の燃焼促進に最適な着火条件としては、混合気の分子拡散特性およびルイス数に着目することが重要であることを明らかにできた。
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